メッセージジャーナル要旨

2006年03月05日

メッセージジャーナル要旨1

スピルバーグとユダヤ民族の安全保障戦略

スピルバーグの映画「宇宙戦争」は"血のつながり"をテーマとした作品です。主人公は遺伝子(血)で結ばれた父子二代の3人、彼らのサバイバルがストーリーの柱、結末は微生物から人間までの"生命(血)のつながり"が侵略者を倒すとの設定です。

このテーマを明確にすべく、「宇宙戦争」は物質としての"血"にもこだわりを見せます。侵略者は人間の血を収集して地に撒き散らし赤い植物を繁殖させます。原作には侵略者が血を体内に取り入れるとの説明があるようですが、その血を前面に押し出したのはスピルバーグ独自の演出です。主人公と地下室の男との対決は、血が自陣に侵入するのを食い止めようとする男の狂乱を引き金としました。また人々が避難するシーンにおいて献血の呼びかけを殊更挿入したのも"血"に観客の注意を引き付ける狙いがあったと思われます。

スピルバーグが作中に仕込んだもう一つのイメージは"大量殺戮"です。火星人が地球人を殺戮し尽くす筋立てに留まらず、川を流れる大量死体、宙を舞う衣服の山と、象徴的な映像を要所に挿入してこのイメージを強化しています。映画「シンドラーのリスト」を制作したユダヤ人監督がこだわる"血"と"大量殺戮"と言えば、自らの血と民族の歴史の他にありません。スピルバーグが映画「宇宙戦争」に"ユダヤ人問題"を重ねているのは明らかです。

途端に作品は、火星人による地球侵略の物語から、迫害者による組織的な殺戮行為と彼らの手から逃げ惑うユダヤ人家族の物語に姿を変えます。迫害のうねりは人類の歴史と共に古く、繰り返し歴史の地層から湧き上がります。その暴力は圧倒的で、ユダヤ人父子はただ逃げるしかありません。スピルバーグの関心は、今後も繰り返されるに違いないユダヤ人迫害衝動から、父から子へとつながる命の絆(父系血統)をいかに守るかにあります。

作中に興味深いシーンがあります。地下室に潜む男がいます。彼は既に侵略者に家族を殺害されており、復讐の念に突き動かされています。主人公は、その男が却って娘や自分の安全を脅かしていると判断し、事もあろうに男を殺してしまいます。このシーンで示されるのは、イスラエルの従来の戦略でもある"復讐"がテロを抑止するどころか世界中のユダヤ人迫害衝動を煽っているとのスピルバーグの主張です。彼は映画「ミュンヘン」でも、逆効果とさらには不正義を強調することで"復讐戦略"を明確に退けています。

彼が替わりに呈示するのは、"構造的なユダヤ人迫害の脅威"に対抗する"構造的な安全保証の枠組み"です。その枠組みを構築するための行動は、あくまで防衛、緊急避難が目的であり、その限りにおいて殺人も正当化されます。「宇宙戦争」の主人公がリスクを招く者を排除するために殺人を犯したのは、悲しい出来事ではあるにせよ、正当な(仕方のない)行為だったという次第です。

スピルバーグが示した理屈は、1998年の映画「アミスタッド」にその萌芽が見られます。この作品の主人公は強制的にアメリカに連れて来られた黒人で、運搬途中の奴隷商人殺害の罪を問われています。しかし現に抑圧されている者たちによる解放を求めての行動には正義が認められるとの論理で、裁判所は最終的に無罪と判じます。この事例を映画化したスピルバーグは、後に自らの根拠をここに見出したはずです。このとき同時に、スピルバーグの視点はユダヤ人から黒人へ、少数民族、弱者へと広げられます。彼らも解放対象に追加されることで、防衛戦略の正当性が強化されたのです。(この視点は映画「ターミナル」に引き継がれます)

迫害されている者たちをその恐怖から解放したい――スピルバーグの切実な思いは「防衛」のための積極行動を正当化する考えに行き着きました。しかしこの論理は、ブッシュドクトリンとそっくりです。両者は手を携えて、復讐よりももっと多くの悲劇を世界に生み出します。

メッセージジャーナル要旨


Story
S・スピルバーグ監督がメガホンを取り、トム・クルーズとダコタ・ファニングを主演に迎えて放つ、53年公開のSF映画のリメイク版。地球の侵略を目論む異星人とそれに立ち向かう人類の姿を最新のCG映像を織り交ぜて描...(詳細こちら


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メッセージジャーナル要旨2

戦略目標:キリスト教社会の打倒

「危険から逃れるためなら生き物は何だってする」(映画「マイノリティリポート」の不気味なセリフ)――前の記事で確認したように、スピルバーグは防衛のための行動なら多少の犠牲が生じても許されるとしています(「宇宙戦争」の地下室の男、「アミスタッド」の奴隷船の乗員たち)。具体的にそれはどんな行動を指し示すのでしょうか。この疑問の答えを導くさらなる問いは「ユダヤ人の安全を脅かす最大要因は何か」です。その要因を取り除くことが防衛戦略の目標となるはずです。

映画「AI」に示されているのは、それが"キリスト教"だとの認識です。主人公はキリスト教社会に同化しようとする者として描かれます。まるで初期キリスト教徒のように競技場で迫害され、カトリック教徒のように女神像に祈りを捧げ、プロテスタントのように「オンリーワン」にこだわります。彼はキリスト教社会に受け入れてもらおうと懸命に努力し、熱望するのですが、最後まで冷たく突き放され続けます。結局キリスト教社会が絶滅する未来にしか彼の希望は見出されません。(映画「アミスタッド」で被抑圧者の希望として描かれたキリスト教が3年後にはこうして切り捨てられます)

映画「宇宙戦争」で最初に侵略者が出現したのはキリスト教会の地層から、主人公に倒されるのは「人は死んでも生きる」とキリスト教の聖句を唱える男でした。映画「ターミナル」で主人公やマイノリティたちを迫害するのは、魚で象徴される人物です(魚はキリスト教のシンボル)。バチカンは2000年にユダヤ人迫害に責任があったと認めました。この謝罪を受け入れることなく、スピルバーグはユダヤ人迫害の構造的源を絶つ決意をしたようです。

キリスト教社会の壊滅、キリスト教の打倒がユダヤ人のための防衛戦略目標です。では、その目標を遂行する舞台はどこでしょうか。映画「ターミナル」はアメリカに注目します。そこではユダヤ人を含むマイノリティたちがキリスト教徒、中でもプロテスタントを奉じるWASPに迫害されているとの認識が披瀝されます。「出て行って戦え」とのアドバイスに従い、主人公がアメリカの地に足を踏み入れ戦うことで、彼らは解放されなければなりません。

映画「ターミナル」には、ユダヤ民族の歴史的体験「出エジプト」が重ねられています(主人公の姓ナボルスキーNavorskiはネボ山Nevoの隠喩)。異教徒であるキリスト教徒の手からアメリカを解放し、ユダヤ人が主導する"新しいカナン"として再生させる―それがスピルバーグの希望の内実です。

それはまた、映画「ミュンヘン」で示された諸民族の"セーフハウス"が米国に実現されることをも意味しています。"自由のための戦い""解放のための戦い"という試練(映画「AI」において水の洗礼を受けるニューヨーク)を通してキリスト教を打倒し、誰もが安全を保証され、もはや恐怖に駆られて逃げ惑う者がいない"平安の地(エルサレム)アメリカ"を新生させるというのです。

メッセージジャーナル要旨


Story
スピルバーグが故キューブリックの原案を、最新技術を駆使し映像化したSFヒューマンドラマ。子供の身代わりとなったロボットに“心”を持たせる試みが行われたが、彼は次第に自らのアイデンティティに疑問や不安を抱...(詳細こちら


Story
スピルバーグ監督がトム・ハンクスを主演に、空港で起こる出会いと別れを描いた感動作。言葉が通じない空港で足止めされた男が、ある約束を果たすために空港ターミナルで生活を始め、周囲の人々と交流を深めていく。...(詳細こちら

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メッセージジャーナル要旨3

戦術:ヨハネ黙示録のストーリー転用

ユダヤ人防衛のための戦略目標、その戦略が展開される舞台が明らかになりました。ではさらに、このアメリカ改造構想は、何をもって推進され、何がその成功を担保するのでしょうか、つまりその戦術はどのようなものでしょうか。

映画「マイノリティリポート」は、それが"ヨハネ黙示録の転用"であることを明かしています。この作品は犯罪を予知により未然に摘発する機関の責任者が、予知された内容を利用して完全犯罪を企むという物語です。まずは別人を使って事件を進行させます。犯罪は発覚し未遂犯は逮捕されます。次に予知された状況の記録をそっくり真似て、今度は真犯人が殺人を決行します。真犯人は目的を達成し、責任を問われることはありません。ここで重要なのは「予告されたストーリーをなぞる行為」です。

アメリカの政治上の大きな変革が90年代以降に顕著になりました。それまで政治に無関心だったキリスト教福音派が、啓発され組織化されて政治力を有するようになります。キリスト教右派、原理主義者たちと合わせ、数千万人もの大集団を形成する彼らは、政治の趨勢を決定的に左右できる勢力として台頭します。そんな彼らが共通に抱くのが"ヨハネ黙示録"の逐語的理解であり、現代が"終末のとき"であるとの認識です。

予告された未来の諸事件、ヨハネ黙示録の記述をなぞれば、つまりその出来事をそっくりそのまま再現させれば、"神の物語"が実現しているように見えます。自分たちの認識を確信したキリスト教原理主義・福音派が取るであろう行動は容易に予測(計算)できます。構想者は彼らを利用してヨハネ黙示録をなぞった後、ある時点で軌道修正して結末を彼らの目的どおりに改変すれば済みます。こんな具合です――

1.現代が"終末のとき"であるとの彼らの確信を一層強化する情勢を演出し、その勢いを利用して彼らと価値観を同じくする者を大統領職に就任させる
2.さらに黙示録的世界を演出し、大統領に権力を集中させて、アメリカをキリスト教帝国に変貌させる
3.リベラリストに蜂起させ、その混乱を理由として大統領に似非神権政治を徹底させる
4.「大統領は終末のときの獣だった」と暴露することで大統領とキリスト教徒を叩き、反動を利用してキリスト教社会を壊滅させる

言うまでもなく上記のプロセスは、大統領をブッシュジュニアとして現実に進行しているものです。つまりアメリカ改造構想は、スピルバーグの妄想ではなく、現実と接点を持っているということです。

1について――選挙戦直前、実にタイミング良くシャロンが神殿の丘を訪問し、イスラエル-パレスティナ間の緊張を極限まで高めました(第二次インティファーダ勃発とイスラエルによるパレスティナ活動家暗殺作戦の応酬)。大統領選で他のいかなる集団よりも強い影響力を行使したのが、この情勢を受けて結束したキリスト教原理主義・福音派だった事実は周知のとおりです。かくして彼らの代表と自他共に認めるブッシュが第43代米国大統領に就任しました。

2について――まさに911テロ事件です。聖書を碌に知らない者にさえ、WTCが崩壊するシーンは黙示録の一コマと見えたことでしょう。ましてや米国のキリスト教徒がこの出来事で現代の意味を確信したことは疑いがありません。さらには、より直接的にヨハネ黙示録を想起させたのが中東、バビロンでの戦い、即ちイラク戦争でした。彼らの指導者の一人は「われわれは聖書の預言がこんなに早く、しかもドラマティックに成就しているのを目撃すると、興奮で息が詰まるほどだ」と発言しています(栗林輝夫著「キリスト教帝国アメリカ」)。二つの大事件は上記の観点からは意外にも同じ意図に基づくものとして理解できるのです(ブッシュはブッシュでまた別の実利的動機を持ちます)。

4について――既にブッシュ追い落としのための準備工作が進行しています。私はその証拠映像を提示しました。時期が来れば、この映像または写真が必ず持ち出されるはずです。ブッシュが666の獣だったとするコメントとその証拠映像は、ピンポイントでブッシュ支持層に打撃を与えるに違いありません。

現時点でまだその姿を現していないものは3の"危機における大統領権限強化"だけです。米国には南北戦争時に非常時大権を行使したリンカーンの前例があります。司法・立法・行政権を糾合したのはこの大統領だけです。それはアメリカ合衆国という国そのものが崩壊する危機に際してのみ可能となった奇跡です。その奇跡が入念な準備を経て再現されようとしています。(リンカーン型の強権政治を行う準備ができているのはブッシュだけです。ポイントは司法権です)

構想を立てた者はこう考えたはずです――「もしこのプロセスがなければ、4で期待される社会の力は生み出されないだろう、単なる政変劇で終われば社会体制を変革できない」。大統領の追放だけでは意味がありません。現支配層を根こそぎ一掃するためにはどうしても第一級の国家危機、内戦が勃発しなければならないのです。

では、誰がこの内戦を引き起こすのでしょうか?構想者は、1と2のプロセスで生み出される負のパワー、つまりリベラリストの不満を利用しようと考えています。彼らは敢えて挑発されているのかもしれません。しかし彼らは首謀者に仕立て上げられるだけで、実際はリベラリストとは関係のない何者かによって動乱が演出されるだろうと私は予測しています。そして真のリベラリストは迫害され、次に一見リベラリストの勝利と思われる4の変革が起こされるとき、彼らには大したパワーが残されていないのです。自由が勝利したと宣言されるに違いない最終変革は、実は名ばかりの、最初から計画された詐欺事件です。

私たちは「新しいパールハーバー」なるスローガンを知っています。911事件のときに米国社会を席巻したものです。同様にこの内戦は「新しい南北戦争」と呼ばれるはずです。そして最後に「新しい建国」で米国史は折り返されて"米国改造"が完成します。この大胆な企てを貫くのが"キリスト教"であり、その目的もキリスト教の破壊にあります。ターゲットのキリスト教徒が信じるヨハネ黙示録を逆手に取って、キリスト教徒自身を主役に押し立てつつ、まさに彼らを倒そうとするこの計画は論理的には実に筋が通っています(自分たちは信じてもいないからこそ利用が可能)。倫理的には最悪ながら。

メッセージジャーナル要旨


Story
S・スピルバーグ監督がT・クルーズを主演に迎えたSFサスペンス。近未来、犯罪予防局が設立され、犯罪者は犯行前に逮捕されるようになっていた。だが、予防局チーフ・ジョンが犯罪者と予告され、陰謀を感じた彼は事...(詳細こちら

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メッセージジャーナル要旨4

構想・実行者の正体と動機:(今後の解明課題)

これまでスピルバーグの考えや行動として主に記述してきましたが、もちろんそんな構想を彼が実行する訳はありません。スピルバーグの背後には実行グループ(本コラムでは単に"フィクサー"と呼んでいます)が存在します。多分構想自体も彼らのものでしょう。スピルバーグは彼らの宣伝担当と思われます。

なぜ自分たちの思想や計画を仄めかさなければならないのか――それは既に指摘した自己正当化のためであり、計画を実行に移す際の世論環境整備のためであり、組織の存在と力を誇示するためでもあるでしょう。よく過激派が特定メディアを使って犯行を予告し、実行宣言を行うのと全く同じ発想と考えられます。この場合は"特定のメディア"が、世界の多くの人々が目にする大メディア"ハリウッド映画"だったというだけのことです。(必然的に娯楽要素の中にメッセージは変形され埋め込まれます)

スピルバーグとフィクサーの関係は1997年頃に進展したと推測されます。既にスピルバーグは映画「シンドラーのリスト」でユダヤ民族の安全保障問題に目覚め、さらにはマイノリティへと視線を広げているところでした(映画「アミスタッド」)。フィクサーの思想はスピルバーグの琴線に触れたはずです。フィクサーは、小手調べにもう一つの危機テーマ"小惑星・彗星の地球衝突"で映画「ディープインパクト」を製作させます(このテーマは早々に効果が低いと判断され、戦略には採用されていません)。

忠誠テストに合格したスピルバーグにフィクサーは構想を打ち明けたと思われます。まだ抽象的な理解でしたが、そこから得た発想をスピルバーグは映画「AI」で展開しています。彼がこの構想を"現実に遂行される計画"として認識したのは、911テロ事件の勃発が契機でした。この時受けた衝撃は映画「ターミナル」に刻印されます。911テロ事件以降、スピルバーグは構想や思想をより具体的に映画でメッセージすべく諸作品の制作に取り組んでいます(既述)。

フィクサーの正体、または関係者と疑われる人物の名は既に幾つか挙がっています。また中心人物の名も何度か登場させてはいますが、フィクサー追跡の文脈からは離しました。そうした人物についての考察を深めるのが、今後のメッセージジャーナルの課題です。スピルバーグは純粋に(?)ユダヤ人の安全を願っているようですが、フィクサーの思惑はまた別のところにあるようにも思えます。そうした動機の解明も待たれます。

「隠されているもので顕わにならないものはない」―虚偽や欺瞞で包まれたフィクサーの平和は戦争と同義です。本当の平和をもたらしてくれる真実の到来を切に祈ります。

*本コラムにユダヤ人・ユダヤ民族に対する偏見を助長する意図は全くありません。私は特定のユダヤ人グループとこれに協力する特定の非ユダヤ人を告発しています。同様にハリウッドや政治組織(例えばネオコン)を一括りに非難する積りもありません。

メッセージジャーナル要旨

*2005年7月から2006年2月までの本コラムの要旨を掲示するに当たり、本当は出発点となったのに、敢えて言及を避けた映画「アイランド」について以下に補足説明をさせていただきます。続きを読む
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映画(劇場公開・DVD・ビデオ)、書籍、ニュース、キャンペーンなど、メディアを通して表現されたものからメッセージを抽出し、隠された意味や表現者の意図を探ります。

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