書籍

2008年02月10日

小説「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー著)のメッセージ

ベータとプサイの間

ドストエフスキーは私たちの世界に厳然として存在する悪に目を見開いていた作家です。何の罪もないのに悪意の大人に虐げられ、また殺される子供たちや動物たち(つまり弱者)に作家はたびたび言及します。私たちの誰よりこの問題に深く心を痛めていた様子が窺えます。キリスト者ドストエフスキーにとって、それは次の問いに対する答えを探す旅でもありました―なぜ神がこの悲惨な現実を許容するのか?

ドストエフスキーが作家生命を掛けて、3つの方向からこの問いにアプローチしたと私は考えます。

1.無神論+社会改革

「神など存在せず、この世界が弱肉強食の原理に従っているだけのこと」と宣言したのは、「罪と罰」の主人公ラスコーリニコフでした。「世界の悲惨さを減じるためには自らが強者となって世界を改革するしかない」とする「無神論+社会改革」のパターンを彼は体現しています。

神(永遠)が存在しない世界では倫理・規範は無意味であり、すべてが許される理屈です。ラスコーリニコフはこの思想を実践しながら、しかし信じ続けることができません。そこに何か大きな矛盾があることを魂が感じたからです。やがてその直感は、許されるとするなら究極的には踏み越えたすべての人に許されるということであり、最後の一人となるまで続く戦いによって世界の破壊だけが実現されるとの認識によって裏付けられます。

今回、取り上げた「カラマーゾフの兄弟」に登場するスメルジャコフも同じパターンで造形された人物です。彼にはこのパターンの帰結として滅びが定められています。この思想を彼に吹き込んだのは二男イワンであり、彼も精神に異常を来して滅びるのですが、この人物はもう少し複雑に造形されており、表面的には無神論者なのに揺れを見せます(三男アリョーシャと同じ神懸かりの母を持つ設定)。

2.キリスト教精神+社会改革

揺れるイワンが公に主張するのが第二のパターン「キリスト教精神+社会改革」です。彼は神がこの現実を許容するのはおかしいと考えています。もし神が存在するにしても、その神が創った世界は断固拒否するという立場です。しかるべき宗教者がキリストの精神をもってこの世界を治めなければならない(独裁制であれ、善政が期待されている)。イワンが創作した大審問官は世界の創造(アルファ)と裁き(オメガ)だけは神に委ねるが、その間の世界運営については自分に任せろと神に迫ります。(国家が教会になるべきとの主張も同趣旨)

この考えは当ブログが以前に取り上げた「理神論」に他なりません。キリスト教世界は、「信仰」の時代から「理神論」を経由して現代の実質的「無神論」へと変節してきました(神の権威の段階的限定から否定へ)。「理神論」は中世と現代をつなぐ重要なリングです(ドストエフスキーはフリーメーソンにこの思想を見たようです)。第一のパターン「無神論+社会改革」よりも「キリスト精神+社会改革」をドストエフスキーは危険視しています。それは神の意志に真っ向から反するからですが、このことを理解するためには、さらに先へ進む必要があります。

3.神への全幅の信頼

第三のパターンは「神への全幅の信頼」です―「神の御業は人の目には不可解だ。悲惨な現実も最善の結果を招来するためにある」。現実を根拠とした神への異議申し立ては旧約聖書のヨブに倣って取り下げられます。長男ミーチャが流刑に処されるとするなら、それは人の目には大きな不幸に見えます。しかしそれがミーチャが更生するために避けられない道だったとすれば?本人はそのことを自覚して受け入れようとします(ドストエフスキーの実人生との重なり)。あるいはコーリャ少年の死は窮乏家庭における受け入れ難い悲劇のはずです。しかしそれを作家は何かむしろ暖かいものとして描きます。

神の道はまっすぐではない、その途上には正反対の出来事が配されることがある―これがドストエフスキーの結論です(同時に彼の創作手法としても確立)。幻の次作(第二の小説)で作家がこのシミュレーションを試行するつもりだったと、私は思います。アリョーシャは多くの方の推察どおり皇帝暗殺という父殺しへと進むのでしょう。それは「キリスト精神+社会改革」の実践として行われざるを得ないのです(この意味でイワンはアリョーシャに期待)。この正反対の道を通って、アリョーシャが「カラマーゾフの兄弟(第一の小説)」で示唆された「神への全幅の信頼」へと至る物語が、次作で本格的に展開されるはずだったと思います。

神に信頼する立場からは、人間の手による社会改革は不要です。社会主義者にせよ、宗教者にせよ、およそ人間の手によって世界調和を目的に遂行される改革は、最善の結果を招来する神に反して、無数のより悲惨な出来事を招来するばかりです。その最終目的である世界調和などとても実現されません。

しかし人間のそのような愚かな試みさえ神は歴史に織り込んでいます。イワンはそのことにも気づいていたと私は思います(イワンはすべてのパターンを横断する預言者のような役回り)。動機は純粋でありながら間違った道を突き進もうとする大審問官に「彼」が口づけをするシーンをイワンは物語詩の最後に置いたのです。

その後の大審問官、書かれなかった続編のアリョーシャと共に祈りを捧げたいと思います―生きている父よ、わたしの思いではなくあなたの御心が行われますように!

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

getmessage at 15:20|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2008年01月11日

小説「クリプトノミコン」(ニール・スティーブンスン著)のメッセージ

クリーブランドの埋蔵金

昨年末、フィリピン政府が財宝探しを許可制とする方針を打ち出したとのニュースが駆け巡ったのをご記憶でしょうか?山下財宝を始めとするこの種の宝探しが、自然環境を破壊し、人身事故の危険性も高いことからの対応とあります。フィリピンの埋蔵金探しはことほど左様に盛んなようです。
<参照>例えば朝日ニュース

アメリカ人による山下財宝探しを題材に著されたエンターテインメント小説が、ニール・スティーブンスンの「クリプトノミコン」(1999年)です。フィリピン政府は許可を受けた者がお宝を見つけた場合は山分けと都合よく決めたそうですが、小説の主要人物アビの目的はちょっと異色です。著者はアビをユダヤ人とし、今後二度とホロコーストが起きないようにするための資金確保をその動機と設定しました。

アビは、既にホロコーストに対抗してゲリラ戦を遂行するための指南書を著しています。このマニュアル書のタイトルが「ホロコースト教育および回避に関する情報集」、略して"HEAP"です。彼は財宝によって"HEAP"を配布し、実践のための準備(つまり特殊な武器を製造したり、ゲリラ戦訓練を施すこと)をするつもりでいます。

私は記事「映画『レディインザウォーター』のメッセージ6」で"HEAP"を採り上げました。同作品の中でもう一つのゲリラ戦マニュアル"The Anarchist Cookbook"が示唆されていたからです。こちらはベトナム戦争時に米政府に武器を持って立ち上がるよう説いた現実のアブナイ書物です。この本を調べるうちに"HEAP"のことを知り、映画の主人公の名が"Heep"だったことから正しく道を辿っているとの感触を得た経緯があります。
(参考)映画「レディインザウォーター」のメッセージ6

その後、同音異綴であることから少し迷いもしましたが、監督のシャマランが発音で遊んでいることから(Jesus ChristとJGs Crunt、an halfとa narf、Heepとhipなど)、この判断が誤りではなかったと今は結論しています。シャマランは"Cookbook"をパン屑にして、観客に"HEAP"への道を指し示していたのです。

正月休みにようやく「クリプトノミコン」に当たることができました。そして"HEAP"が単に一人物の動機に限定されないことを確認しました。もう一人の主人公ランディは「ぼくらが命を賭けてもいいくらいに崇高かつ最良の目的は...”将来のホロコーストを防ぐこと”だ」と言っています。共に発掘作業に当たる牧師イノックは、"HEAP"を批評はしていますが、基本的には同意しており、歴史上何度も人類が突き動かされる戦争衝動(アレス:ユダヤ人迫害を含む)からテクノロジー(メティス:暗号やHEAP銃のことでしょう)によって身を守らなければならないとの独特の信念を抱いています(著者の思想とも思われます)。

もう一人、埋蔵金を埋めた張本人の後藤は、アビから埋蔵金使用目的を聞き、戦争を無くすためならと発掘を引き受けます。最後に埋蔵金を手にする者たちの動機は完全に一致しています。ホロコースト防止がこの小説の鍵となっているのです。

映画「レディインザウォーター」の主人公の姓名は、"HEAP"と"Cleveland"の組み合わせでした。アメリカのクリーブランドに埋められた埋蔵金(石油)を既に掘り出した者がいるのですから、ホロコースト防止のためにわざわざフィリピンまで出かける必要はないのかもしれません。20世紀最大の資産家ロックフェラー家の同意さえあればHEAPプロジェクトは推進できるのです。


*私もホロコーストが今後繰り返されないことを願います。しかしデイヴィッド・ロックフェラーが手掛けていると推測しているプロジェクトには反対です。彼らのやり方は、別種のホロコーストを幾つも引き起こすことになるでしょう。
*繰り返し書いておきますが、ユダヤ人への偏見を煽る意図はありません。


クリプトノミコン〈2〉エニグマ (ハヤカワ文庫SF)

getmessage at 20:27|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2007年10月14日

メッセージジャーナルから4

オッペンハイマーと核の国際管理

原爆の出現を誰よりも早く予測し、その威力ゆえに世界の在り方を変えなければ人類は滅びてしまうだろうとまで予言したのはイギリスのSF作家にして社会思想家HGウェルズでした。1933年物理学者シラードが信号待ちの間に原爆の原理を着想しウェルズ予測の正しさを認めたのは科学史上の印象的なエピソードです(その後、シラードはアインシュタインの名を借りてFDルーズベルトに原爆開発を提言)。一方、世界再編に関するウェルズ予言の正しさを認めたのは理論物理学の雄ニールス・ボーアでした。
<参照>キャサリン・コーフィールド著「被曝の世紀」
(参考)「宇宙戦争」のメッセージ

1944年初めまでにボーアは開発国が原子力を独占することなく、国際管理を実現しなければならないとの信念を固めていました。国際的な査察官による関連施設への完全な立ち入り調査の実施と科学的発見への完全なアクセスがその二つの柱でした。このような「開かれた世界」(重要な施設も知識も国家機密にされない)なくしては、人類の存続は危ういと彼は考えました。
<参照>カイ・バード他著「オッペンハイマー」上P447

ボーアを尊敬し、同年に彼と徹底的に話し合った原爆の父ロバート・オッペンハイマーもこの考えに共鳴します。原爆を「人類の脅威」であると同時に「偉大なる希望」でもあると見たボーアの思想は、オッペンハイマーの開発意欲を刺激します。オッペンハイマーは1945年に浮上したデモンストレーション案(原爆の示威行為に止めるとする案)に反対し、実戦での軍事利用をこそ念願します。地球からすべての戦争を無くすための尋常ならざる犠牲を彼は必要としたのです。彼らはまさにHGウェルズの正統な継承者でした。
<参照>カイ・バード他著「オッペンハイマー」上P487

原爆開発と世界政府は、オッペンハイマーにとっては不可分でした。前者の仕事を成し遂げた彼は、続いて世界政府立ち上げに着手します(「世界政府なしで永久の平和はあり得ない。平和がなければ原子力戦が起きるだろう」)。ただし、当時の世界情勢を熟知していた彼は「暫定的解決策」として原子力管理を任務とする国際組織立ち上げに目標を定め、各国の首脳部が勝手に見直しのできない権限を備えた超越的な「共同原子力委員会」の発足を唱えます。そしてそれが理解を得られにくいと見るや、さらに妥協してバーニバー・ブッシュやジェームズ・コナントも主張していた国連に目を転じ、各国の主権の一部を移譲させた国連原子力委員会による管理案、即ちアチソン・リリエンソール案の骨格を組み上げました。(この他にソ連との直接対話により国際管理の実現を目指したボーアやヘンリー・スティムソンらの動きもありました)
<参照>カイ・バード他著「オッペンハイマー」下P59,71
「世界を不幸にする原爆カード」P289

しかし、この案もトルーマンから国連主席代表に指名されたバーナード・バルークによって改悪され、ソ連の拒否権に遭って廃案となります。その後、世界政府はもちろん、積極的な世界管理の仕組みも真剣に討議されることなく、世界は正反対の方向(独占と秘密主義、対立と競争、そして拡散)へと突き進みます。同時に政府方針と鋭く対立したオッペンハイマーは反共ヒステリーの渦の中で権力中枢から排斥されます。ヒロシマ・ナガサキを犠牲にして恒久的な平和世界を築くはずだったオッペンハイマーの原爆は、結局何の成果も生むことなく、悲惨な傷痕だけを地上に残します。HGウェルズに源を有するアクロバティックな反戦思想はこのとき一旦葬られたのです。
<参照>カイ・バード他著「オッペンハイマー」

さて、私はこう見ています―驚くべきことに、葬られたウェルズの夢が半世紀の時を経て現代に蘇えろうとしている、ウェルズの継承者たちがまたしても蠢き始めたと。それは当ブログで繰り返し取り上げている21世紀初頭のロックフェラー勢力の活動のことです。彼らは世界平和を大儀に、世界を自分たちの手で管理すべく新しい体制を構築しようとしています。そのために既に「戦争を終わらせる戦争」が再現されました。誰も戦争で苦しまない世界をつくるために、彼らは911事件を引き起こして数千名の犠牲者を生み、引き続いてアフガニスタン、イラクにおいて多くの犠牲者を積み上げました。

オッペンハイマーの師マックス・ボルンは「(私の生徒たちが)利口さを抑え、もっと叡智を発揮してくれたら良かった」と回想したそうです。この言葉はオッペンハイマーだけを指している訳ではありませんが、彼の本質を言い当てています。オッペンハイマーは課題の所在を探り当て、解決策を練り上げ、現実に柔軟に対処できる有能な人間でした。しかし彼の本当の悲劇(名誉が汚されたことではなく)、当初の目的と結果としての現実の乖離の原因は、まさに自分の能力、人間の知恵を過信した点にありました(彼は無神論者にして人間理性崇拝者)。
<参照>カイ・バード他著「オッペンハイマー」下P389

ロックフェラー一派が狡知に長ければオッペンハイマーの失敗を超克できると考えている限り、乖離は大きくなるばかりです。彼らはオッペンハイマーと同じ過ちを繰り返そうとしています。各人が善と思うことを知力・資力を始めありとある力を振り絞って実践したとき、そこに現れる世界が悪でしかないことを認識したラスコーリニコフにこそ彼らは学ぶべきだったのです。
(参考)"666"のメッセージ1

被曝の世紀―放射線の時代に起こったこと


オッペンハイマー 上 「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇


世界を不幸にする原爆カード―ヒロシマ・ナガサキが歴史を変えた

getmessage at 19:35|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2007年09月28日

書籍「アメリカの中のヒロシマ」(RJリフトン著)のメッセージ

感覚麻痺の帰結

アメリカ国民の大多数が広島・長崎の原爆投下を支持していることはご存じでしょう。では、その後の紛争・戦争においても国民の過半数が原爆使用に同意した場面があったことをご存じでしたか?ギャラップ社世論調査で少なくとも次の3回が確認できます。
1.1951年朝鮮戦争で中国が参戦したとき
2.1954年ベトナムでフランス軍が包囲されたとき
3.1955年台湾海峡危機が訪れたとき(1954年の誤りでは?)
朝鮮戦争でマッカーサー元帥が原爆使用を進言し、当時の大統領トルーマンに更迭されたことは有名な話です。それを私は戦場の軍人の勇み足だろうとこれまで思っていました。アメリカ国民がこれほどまでに好戦的だった(あるいは核兵器使用に対する慎みがまるでない)ことには驚かされます。
<参照>リフトン著「アメリカの中のヒロシマ」(調査結果は下P143注より)

精神医学者リフトンは、米国民のこうした心理が広島・長崎の原爆への対処に起因していると分析しました。原爆のみが戦争終結をもたらし、それゆえその後に予定されていた本土侵攻により失われたはずの多くの人命を原爆が「救った」(決して無力な敵に対する復讐などではないし、ソ連政策からでもない。原爆使用は人道的だった)―これがどうしても使用を正当化しなければならなかった米政府が編み出した公式見解(1947年スティムソン論文で確定)です。これを当時の国民は熱烈に支持します。本当のところ、国民は広島と長崎における原爆被害に強い不安を感じていました。しかし彼らは自国が不道徳な国などと考えたくはありません。そこで不安を抑圧し、政府見解に飛びついたのです。

その頼みの綱は揺さぶられます。「人命を救うために殺す」との理屈は、「どんな残虐行為も、全くどんな行為であれ、こうした理由でなら許される結果になってしまう」(ドワイト・マクドナルド/上P49)と識者から批判され、オランダ爆撃の際のヒトラーの理屈と並置されます(フルトン・シーン/上P112)。歴史家からは、日本本土侵攻作戦立案時の被害予測資料(上P253)、米戦略調査団の終戦時期に関する報告(上P114)などを根拠に、原爆が救ったという人命数や「原爆のみが戦争終結をもたらし」たとの主張に疑問が投げ掛けられます。

公式見解が史実でもなく正論でもないと疑われ兼ねない脅威にあって、国民は現実に対し堅く心を閉ざすことで防衛しようとします。一方で「原爆により救われた人数」は不安の大きさに比例して膨れ上がり、他方で被爆の現実を知ること、償いにつながる被爆者救済が拒否されました。こうした態度をリフトンは「感覚麻痺」と診断します。戦後の早い時期にアメリカ国民が集団として精神を病んだと彼は考えました。
<参照>被爆者側の「感覚麻痺」(記憶喪失、感情鈍磨)については中澤正夫著「ヒバクシャの心の傷を追って」(リフトンの「死の内の生命」は未読)

広島と長崎の原爆という過去の出来事を起因としたアメリカ国民の病理は、必然として現在と未来をも蝕み始めます。一旦原爆使用を認めてしまえば、そして不幸なことに原爆を道徳的だと断じてしまえば、必要なら今後の使用も許されるとの認識へ真っ直ぐにつながります。現実から逃避しているだけに確かな歯止めは形成されず、水爆開発も、核兵器の大量製造・保有・配備も実に安易に是認されるばかりです。その結果が冒頭の意識調査であり、その後も拡大される米ソ核武装競争の現実だったのです。

政治家・国民から核武装について真摯な考察を行う機会、冷静な判断を下す機会を奪った第一の要因が核を巡る秘密主義にあったことは確かです。原爆開発の過程では過去に例がないほどに機密保持が徹底されました(内部でも全体像を知る立場の研究者は限られていた)。原爆投下を決定したのは極少数の人たちです。跡を継いだ原子力委員会(AEC)は、都合の悪い情報を慢性的に隠匿しました(後にその悪質ぶりが露呈して解散)。ケネディ政権の閣僚スチュワート・L・ユードルが主張するとおり、諸悪の根源は秘密主義にあり、何よりも必要とされるのは「開かれた政府」に違いありません。しかし例え情報が公開されていても、国民が見ようとしなければ、好戦的な政治家が国民を地獄の淵に導くのは容易いでしょう(現に広島・長崎の被害実態は今だにスミソニアンで展示できない)。
<参照>スチュワート・L・ユードル著「八月の神話」(AECの情報隠匿の実態を知ることができます)

核の悲劇を繰り返さないためには、核の狂気から人類を救い出すためには、やはり国民の病理を癒すことこそが肝要です。国民が現実から目を背けずに、しっかりと考え、また判断していれば、トルーマンは原爆の量産や水爆開発を勝手に推進できなかったでしょうし、ロバート・S・マクナマラがMAD(相互確証破壊)戦略を持ち出すこともなかったでしょう。この単純な処方を私たちから遠ざけているのが「同胞意識・帰属意識」であることもまた明らかです。米国民は母国の愚行を正視できません。国と自分を一体視する心理が働くためです。退役軍人は米軍の愚行を直視できません。軍が正義や自由のために活動していないとなると、自分の行為を正当化できなくなるからです(20世紀前半にしてバトラー将軍は米軍を多国籍企業の私兵であると認めているのに)。

当時の首相チャーチルは大統領トルーマンに向って「あなたと私が聖ペテロの前に立ち、彼が『汝らは原爆投下に責任があると思う。汝らは何かいうことがあるか』と言われた瞬間に、答える準備がちゃんとできているでしょうね」と尋ねたそうです(上P266)。いつか誰もがこの世での自分の行いを裁かれる瞬間を迎えるのかもしれません(クリスチャンでないなら閻魔大王やスーパーエゴに置き換えても良いでしょう)。その時に人はアメリカ人を理由として、米軍に所属したことを理由として、特定の出自を理由として裁かれるでしょうか?聖書が明言するとおり、そして理性が教えるとおり、私たちは個人として裁かれるのです。(敢えて続ければ、クリスチャンを理由としてでもない)

米国民が同胞意識・帰属意識に引きずられて、「米国は正義の国だ、だから原爆投下は正しかった」と言うとき、それまで原爆投下とは何ら直接の関わりを持たなかった人が、初めて個人として関わりを持つのです。東京大空襲や広島・長崎の原爆投下に道を開いた重慶爆撃(また南京虐殺、従軍慰安婦等々)について、戦後世代の日本国民が事件の存在を否定したり、行為を正当化しようとするとき、あるいは事実を隠ぺい・歪曲しようとするとき、その人はその事件と関わりを持つのです。大切なのは、個人が何をしたか、何を言ったかです。
<参照>前田哲男著「戦略爆撃の思想」

冷戦が終結した今も、2万発の核弾頭が「配備」されているそうです。私たちの世界が狂っていることを私たちは直視できるでしょうか?それとも「しょうがない」と公言しておきますか?いっそカーチス・ルメイに勲一等旭日大綬章を授与しますか?(ルメイの部下として戦略爆撃を立案したのがマクナマラ)。
(参考)映画「ロードオブウォー」のメッセージ1(妻は夫の仕事から目を背け、私たちは国家による武器取引の実態に知らないふりをした)

アメリカの中のヒロシマ (上)
アメリカの中のヒロシマ (下)
ヒバクシャの心の傷を追って
八月の神話―原子力と冷戦がアメリカにもたらした悲劇
戦略爆撃の思想―ゲルニカ・重慶・広島
収録時間:122分
レンタル開始日:2006-06-09

Story
アンドリュー・ニコル監督が『ナショナル・トレジャー』のニコラス・ケイジを主演に迎えて描くサスペンスアクション。裏社会で天性の才覚を発揮した“史上最強の武器商人”と呼ばれた男、ユーリー・オルロフの実像を(詳細こちら

getmessage at 23:39|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2007年07月15日

「聖骸布」のメッセージ

ピア・ショック

sindone_nega


































この画像は、少なくとも14世紀から人々に「イエス・キリスト」の全身像として崇拝されていた一枚の布(の片面上部)を撮影したものです。なるほど、中央上部に人間の顔らしきものが見えます。それでも火星の人面岩の方がまだ明瞭ではないかと思えるくらいです。

こんなものが崇拝の対象になるとは、中世の西洋人はいかに迷信深くて単純だったか...とお考えのあなたに、お勧めしたい作業があります。

1.上の画像をお手元のパソコンに保存
(画像上で右クリック>>「名前をつけて画像を保存」を選択>>例えばデスクトップに)
2.スタートメニューから「アクセサリ」の「ペイント」を選択(起動)
(Windowsの場合。その他任意の画像加工ソフトを立ち上げてください)
3.「ファイル」メニューの「開く」で保存した画像を選択
4.「変形」メニューの「色の反転」を選択


以上は、1898年に史上初めて布を撮影したセコンド・ピアが暗室で行った現像作業のシミュレーションです。100年の時を超えて彼の驚きを追体験できましたか?

(「続き」には上記作業の結果が載っていますのでご注意ください)続きを読む
getmessage at 20:37|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2007年04月03日

書籍「暗黒の女神」(ロバート・グレイヴズ著)のメッセージ

女神の復活と女系社会への再転換(ハイパー・ルネッサンス)

「神とマモンに兼ね仕えることはできない」と聖書に記述(マタイ6-24他)されながら正体が明らかでない「マモン」について知るため、ロバート・グレイヴズの講演集「暗黒の女神」を読みました。そこから意外にもデイヴィッド・ロックフェラー一派の思想の核心に迫る手がかりを得ることができたようです。
<参照>松岡正剛の千夜千冊『暗黒の女神』

グレイヴズはマネー(金)の源を求めて歴史を遡行し、純粋な「愛」から始まった行為が、次第に「私利私欲」へと堕し、現代の拝金主義へと連なる下方の系譜を見出します。
母の子に対するギフト > 無償のギフト > 義務のギフト > 物々交換 > マネー > 不義のマネー

彼によれば、マネー時代の聖書は、マネー全般を批判したのではなく、ギリシャ・ローマの神ヘルメス(盗賊と外交を職業とする人々の神)への信仰に基づくマネー観を「マモン」と表現して戒めたのだそうです。キリスト教によって抑圧されたこの神は、教会の権威が失墜した近世になって栄光を取り戻したと彼は解説します。現代は不義のマネーが横行するマモンの時代という訳です。

グレイヴズはさらにこの変遷を「男系社会」「女系社会」の概念を用いて俯瞰します。書籍「暗黒の女神」から両社会の特徴を拾い出します。
【男(父)系社会】 男神 遊牧 山岳 太陽 昼 交換 マネー
【女(母)系社会】 女神 農耕 平野 月  夜 愛  ギフト

愛から私利私欲への変遷は、女系社会が男系社会によって駆逐される過程に一致すると彼は見たのです。

ユダヤ・キリスト教は山岳の神「エル・シャダイ」を奉じる遊牧民(羊飼い)の宗教です。旧約でも新約でも父系血統が連綿と綴られます。キリスト教に母神はいません(その反動で人間マリアが母性原理を担う)。この遊牧民が平野カナンの地に移住し、その地を支配していた農耕民と彼らの奉じる母神を駆逐します。旧約聖書の最大の敵は地母神バアルでした(地母神については異説あり)。

以前の記事で、女神ガイアがデルフィ(デルフォイ、デルポイ)神託所の主宰神の地位を男神アポロンに譲り渡した歴史に触れました。ギリシャ神話でもガイアが男神ゼウスに全宇宙を統括する権力を奪われた経緯が物語られます。紀元前10世紀頃にギリシャで大きな転機、女系社会から男系社会への転換があったことが窺われます。ヘルメスはギリシャが男系社会に移行した後の神です。ですから、グレイヴズにとってはマネーがマモンに侵食された近代以降の状況より、古代に生じた女系社会から男系社会への転換こそが重大事でした(彼はマモンと崇拝者をさほど非難しません)。

「現代の混沌とした倫理観は、男性と女性の原理のバランスを崩した有史時代も初期における革命、すなわち母系から父系への交代から結果するものと信じて」いる彼は、マネーに留まらない「現代の病理」を治癒する方策として反革命、つまりキリスト教の後退と古代の女神復活を待望します。ガイアよりさらに古く、メソポタミア時代の支配神イシュタルを彼は「暗黒の女神」として仰ぎます(暗黒>闇・夜>知恵)。

グレイヴズの思想の輪郭が描けたところで、私たちの関心領域に引き寄せてみます。映画「レディインザウォーター」は二分された世界(ナーフ)をガイアが再統合するとのメッセージを発していました。この二分を「男系社会と女系社会」と見れば、メッセージをより理解できます。プロローグの語りを想起してください。女神ガイアからのメッセージが神託として届いていた(紀元前10世紀以前の)時代にあって世界は統合されていました。しかしその後男神支配(ギリシャ・ローマ〜キリスト社会)が確立し世界は好戦的・暴力的で愛のないものに変質します。そこから女系社会に世界を回帰させ、愛と平和を取り戻すべく(そして世界を再統合すべく)女神復活の物語が幕を開きます。
(参考)映画「レディインザウォーター」のメッセージ8

映画「レディインザウォーター」の登場人物クリーブランドは、暴力の犠牲となった者たち(家族)を思って慟哭しつつ、女神ガイア復活の儀式を執り行いました。グレイヴズもまた、自身第一次世界大戦に従軍し、人間の残虐さに衝撃を受け、古代の女神再生に希望を掛けたのです。グレイヴズがデイヴィッド・ロックフェラーの行動の思想基盤を提供しているとまで今は言うつもりはありません。しかし、少なくとも両者の思想と動機は一致します。

女系社会への再転換(復帰)を通して愛と平和の世界を実現する―デイヴィッド・ロックフェラーの構想は、想像以上に理性(エンライトメント)的です。ユダヤ民族問題を懐に抱きつつ、この大義名分を立てれば、共鳴する人間は決して少なくないでしょう。そして現に、民族の垣根を越えて多くの人間たちが彼に協力しているのです(金と権力目当ての人間も多く混じっているとは思いますが)。

断続的ながら、しばらくこのテーマを追うことにします。(記事集「ハイパー・ルネッサンス」に格納します)

【注記】以上はグレイヴズの思想に沿って記述しており、私の考えとは異なる個所が多々あります。例えば、キリスト教はアガペー(無償の愛)に貫かれており、ユダヤ教を含めギフトをその本質としていると私は理解しています。またキリスト教が男神崇拝であるとも考えません(カトリックの歪んだマリア崇拝のことではありません)。そもそも世界が暴力と戦争で満たされているのは、自分たちの大義名分を掲げて犠牲を厭わず邁進する者たちがいるからです。いくら表面だけ女系社会に移行してみても、以前より悪化した状況に彼らは戸惑うことになるでしょう。
getmessage at 21:01|この記事のURLComments(3)TrackBack(0)

2007年02月04日

小説「宇宙戦争」(HGウェルズ著)のメッセージ

WTCと炭ソ菌を結ぶ線

オウム真理教(当時)の若者たちがアニメにしろ小説にしろSFに影響を受けていたことは周知のとおりです。村井秀夫周辺は「宇宙戦艦ヤマト」が、上祐史浩は「銀河帝国の興亡」が特にお気に入りだったようです。そんな彼らでもH.G.ウェルズにまでは古すぎて手が届かなかったと思いますが、私がずっと感じてきたのは、911事件の首謀者たちがウェルズをなぜか強く意識していることでした。

H.G.ウェルズは、単なるSF作家というより、社会思想家と呼ぶべき人物で、彼なりのユートピアを思い描き、社会に影響を与えてきました。第一次世界大戦が「戦争を根絶するための戦争」(ウッドロウ・ウィルソン)と位置づけられ、第二次世界大戦が「独裁(ファシズム)政権との戦い」(フランクリンDルーズベルト)と位置づけられたのは彼に負うところが大きいと指摘されています。ちなみに両大戦のスローガンに対応する「戦争放棄」「人権」を柱とする日本国憲法も彼の影響を受けている可能性があります。
(参考)HGウェルズのメッセージ
<参照>HGウェルズ著「解放された世界」の浜野輝氏による後書き

彼は人類が核兵器を開発してしまえば世界変革なしでは生き残れないと確信し、核兵器の世界管理を構想、その組織が世界を運営すべきだと考えました。第二次世界大戦後のアメリカは、まさに開発した核兵器に関する技術情報を同盟国に公開し、「核の国際管理」を目指しました。ソ連には情報どころか 重要部品を供給さえした証拠があります。構想どおりの強大な組織は誕生しなかったにしても、核兵器とその拡散が20世紀後半の歴史の主軸を成したのは事実です。

さて、そんなウェルズが1898年に発表した作品が「宇宙戦争」でした。この小説には圧倒的な力をもって人々を迫害する存在として火星人が登場します。彼らは「トライポッド」と呼ばれる100フィート(30m、つまり見上げるばかり)の高さの3本足の装置を使って「人類の大虐殺」(本書の表現)に着手します。軍隊が放った大砲の弾によって倒された装置は2台だけ、人類は迫害者の前にほとんど無力です。ところが事態は急展開します。意外にも太古から地上に棲息する細菌が迫害者を全滅させるのです。(ウェルズは核兵器と毒ガス兵器を早くから予見しただけでなく、細菌兵器の発案者でもあったと考えられます)
<参照>HGウェルズ著「宇宙戦争」

ここに911事件を重ねてみてください。圧倒的力を行使して自分たちを迫害するアメリカの支配体制(経済・軍事・政治)の打倒を何者かが決意します。彼らはその象徴の一つである3棟の高層ビル(トライポッド)を爆弾によって倒します。そしてとどめとして別の象徴を細菌兵器により攻撃します。911テロと炭ソ菌テロ、私たちの脳裏で奇妙に分離されている二つの出来事が100年前に著されたSF小説によってひとつに結び合わされるのですから不思議です。

(上の記述はその何者かが、洞窟のテロリストであってもデイヴィッド・ロックフェラーであっても成立しそうです。しかし炭ソ菌の出所や次第に明らかになりつつあるWTC内部に仕掛けられた爆弾の存在から前者の可能性は消えてしまいます。自身が深く関わった建物を対象とするこのテロは、オウム真理教が味方と目された学者の家を爆破したのと同型の典型的な自作自演行為です。なお、ロックフェラーをWASPの一員と見ると事件の本質が見失われます)

スティーブン・スピルバーグはこの小説の映画化に当たり、物語をさらに911事件の現実に引き寄せました。トライポッドを爆破する際に、砲撃ではなく(映画では大砲は全く効果がなかった)、装置の内部に爆弾(手榴弾)を仕掛け、「内破」させたのです。そして米軍がトライポッドにとどめを刺すシーンではビル倒壊と敢えて重ね合わせてもいます。スピルバーグは迫害者がアメリカのWASPであること、被迫害者はユダヤ人であり、いつ再び大量虐殺されるか知れないことを作品でメッセージしています。(スピルバーグは単純にそう信じているかもしれませんが、911事件の首謀者は単にアメリカを”新しいカナン”にすべく決意し、障害となる現行体制をホロコースト実行者に見立てているだけとも考えられます)
(参考)メッセージジャーナル要旨1

ウェルズはユダヤ人を始めとするすべての民族が平和に暮らす様を夢想しました。そのための新体制(ニューレジーム)構築を彼は目指したのです(民族国家の撲滅、世界政府の樹立、国家に依存しない人間生来の権利など)。911事件の首謀者がウェルズの夢を引き継いだのか、それとも彼の思想の牽強付会かは今のところ断定できませんが、ウェルズを強く意識していることは確かです(犯罪者が推理小説に書かれた特定の手口をヒントにする類の心理か、単にオマージュを捧げているだけなのかも確言できません)。彼らが当日予定されていたニューヨーク市・司法省合同(FEMA参加)のバイオテロ演習を「トライポッド2」と命名したのも同じ表れと理解できます。

建物のトライポッドとは異なり、体制のトライポッド(白人、アングロサクソン、プロテスタント=WASP)は2007年2月3日現在、まだ倒れてはいません。2001年の細菌テロは致命傷とならず、彼らがその時に本気で細菌テロを実行したとも思えません。再度細菌兵器を使用して計画を前進させようとするのではないかと私が危惧する所以です。
(参考)メッセージジャーナルから

解放された世界

宇宙戦争

getmessage at 11:14|この記事のURLComments(0)TrackBack(1)

2007年01月13日

ロックフェラーのメッセージ2

手法の継承

ロックフェラー帝国初代ジョンDのビジネス目標は「競争より協同」でした。それは一部業者の利益を確保しつつそれ以外の業者を排除することを意味しますので、むしろ「談合」と呼ぶべきでしょう。1869年の戦略決定後、彼の最初の動きは、有利な鉄道輸送料を餌に石油精製業者に談合を呼び掛けるものでした(SIC構想)。
<以下参照>ロン・チャーナウ著「タイタン」

結局この目論見に失敗したJDロックフェラーは、競合企業を徹底的に買収する独占戦略に転換する(クリーブランドの大虐殺)訳ですが、それでも彼は談合に拘り続けます。大虐殺から生き残った(実際には批判を避けるために生き残らせた)業者に対して、生産量の制限を取引条件に一定の利益を保証する協定を結ぼうとするのです。

さらに彼は生産者に目を向けます。1972年、彼が署名したいわゆるタイタスヴィル協定は、石油生産業者が自らに厳格な生産制限を課すことを条件にロックフェラー側が高値での購入を約束するものでした。(この試みも生産者側の足並みが揃わず、生産過剰を招いたために失敗します。そしてJDはこの川上をも傘下に収めることになります)

この石油の生産制限を柱とした協同体制づくりは、それから100年後に国際社会において華々しく登場します。OPECです。石油価格をコントロールするロックフェラーのお家芸が国家群スケールで再現され、その本領を発揮したオイルショックに深く関わったのがロックフェラー家の番頭キッシンジャーだったとなれば、この出来事は偶然では片づけられません。ロックフェラー率いる石油業界各社は石油価格の高騰により当時の経営危機から脱し、今に至るも恩恵を受け続けています。
(参考)1968年のメッセージ2

JDロックフェラーが開発し、第三世代が発展させたもう一つのお家芸に「架空の敵」があります。反トラスト法に違反したとしてスタンダード石油を告発した米連邦政府は罪状の一つに「架空のライバル企業によって取り引き制限を企てた」ことを掲げています。ジョンDが推し進めた独占はやがて猛烈な批判の的となりました。これを回避する妙手として考案されたのが、競合を創作することでした。

チャーナウは、天然ガス事業に進出したジョンDがオハイオ州トリード市で繰り広げた茶番劇を報告しています。二つのガス会社が当地での営業権を巡って激しく争っていました。そこで市民は適正な競争を期待し両社に営業権を分かち与えます。ところがその後、両社は共にロックフェラー傘下の企業だったことが判明したのです。

私たちはこの手口も現代に確認することができます。田中宇氏が指摘する米政界内のネオコン対中道派、次第に誰の眼にも明らかとなりつつある共和党対民主党、世界が長く幻惑された自由主義圏対共産主義圏、そして目下の米政府対アルカイダ―対立に見える多くの構図の裏側に私たちはトリード市民が見出したのと同じ黒幕を確認できます。架空の敵を作るなどという発想は、独占を目指して邁進した者、常にこれに伴う社会の批判と闘っていた者でなければ到底思い至らない特殊なものと言うことができます。
(参考)ビンラディン2006年1月声明のメッセージ

タイタン〈下〉ロックフェラー帝国を創った男

getmessage at 10:20|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2007年01月08日

ロックフェラーのメッセージ1

動機の継承

クリーブランドの1石油精製業者に過ぎなかったジョン・D・ロックフェラーが今日の世界王国を築くに至る転換点は1869年にあったとロン・チャーナウは指摘しています。戦略家JDロックフェラーは、自社の経営を安定させるには生産調整と価格の安定が必須と結論づけました。そこでクリーブランド全体の業界管理に乗り出したのです。
<以下参照>ロン・チャーナウ著「タイタン」井上廣美訳

この発想から彼は鉄道を巻き込んだ精油業者のカルテルを結成しようと動き始めます。この目論見はうまく行かなかったものの、結局同地区のほとんどの業者を買収してしまいます。その後順次、他地区の業者も自社の傘下に収めることになる次第は1869年の決断からの必然の道程と言うべきでしょう。

自社の経営のために外部環境に働き掛け変化させるという考えは、以前の記事で指摘したように企業の根源的欲求ではありますが、ロックフェラーほど徹底して実践した企業人は少ないと思われます。彼は輸出拡大に伴って、世界の石油市場を制御しようとしましたし、経営に規制を掛けようとする州政府への働きかけを躊躇しませんでした。
(参考)グランドゼロのメッセージ5

なぜこれほどJDロックフェラーが自分に都合の良い環境を作るために他者に干渉することを是とし得たのか、そこには彼の独特の宗教観があったようです。彼は自分の金儲けが神の意思であると確信していました(「私たちの事業は抗いがたい神意に基づいている」上P466)。神は彼に石油を恵み(「石油、何とすばらしいお恵み」上P273)、スタンダート石油を祝福します(「(スタンダード石油は)石油事業の救世主」上P274)。彼の考えに同意しない者たち、つまり傘下に入ろうとしない業者は神の敵ですから駆逐されて仕方がありません。「(神の元にある)われわれ対彼ら」(上P276)という図式が彼の脳裏にくっきりと刻まれます。

私たちは全く同じ理屈をブッシュ・ジュニアの言動に見ることができます。ブッシュは神の代理人であり、ブッシュとアメリカは常に神に祝福されています。そして自分たちに同調する者とそうでない者とに世界を峻別し、後者を弾圧します。自己の正当化、絶対化に神が利用されています。ロックフェラー帝国初代の特殊な理屈が今日のアメリカ大統領の理屈と相似を成しているのは一体どういう訳でしょうか。
(参考)フィクサーと新世界構想4

JDロックフェラーは世界市場の制御にも、政界工作にも成功することはできませんでしたが、現在の当主デイヴィッド・ロックフェラーが意思を引き継いでいることは周知のとおりです。特にデイヴィッドの時代には帝国は多国籍化していますので、アメリカ外交を通じた世界(国際社会)のコントロールは彼の最大の”経営課題”のはずです。そこにJDロックフェラーの理屈が持ち込まれるなら、彼の行動が野放図になるのは必然の成り行きかもしれません。

JDロックフェラーの言う神はキリスト教の神です。もしデイヴィッドがこの神を引き継いでいるなら、JD同様に彼自身が慈善家でないと精神のバランスが取れないはずです(JDロックフェラーの妻や娘たちはバランスを崩した。2代目は慈善事業に専念)。私はスピルバーグのメッセージなどからデイヴィッドが社会に世俗化を求める一方で、自身は歪んだユダヤ教を奉じていると考えています。正当な嫡子デイヴィッドが初代の人格と行動を形成した宗教とまるで異なるものに脈絡なく転向したとは余りに不自然で信じられません。JDが知り得なかったロックフェラー家の出自を3代目たちがいつの時点においてか気づいたと考えるべきでしょう。
(参考)フィクサーと新世界構想5

*神と金とに同時に仕えることはできないと聖書は明記しています。プロテスタンの神は労働を重んじても、「もっともっと金を稼」げ(上P273)とまでは言いそうにありません。バプティズムへの拘りを踏まえてなお、JD自身がクリスチャンを偽装していた可能性はやはりないとは言い切れません。

キリスト教世界を照らす光の伝道師ヨハネ(ジョン)の使命に加え、ユダヤ人を救済する神の人ダヴィデ(デイヴィッド)の使命までが積み増されたとするなら、デイヴィッドは一体どこまで暴走することになるのでしょうか。

タイタン〈上〉ロックフェラー帝国を創った男

getmessage at 15:11|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)

2006年07月30日

書籍「次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた」(ヴィクター・ソーン著)のメッセージ

宇宙人を煙幕にして伝えられる真実

真実を隠すための最も効果的な方法をご存じでしょうか?真実を完全に封印することがどれほど難しいかは私たちは歴史から学び知っています。情報化社会のならず者たちが考えた画期的な方法は、自ら核心でない真実を公開し、それを明らかに嘘と分かるものと混ぜ合わせて人々に提示することです。国際金融家たちは、マスコミや文筆家たちを動員してこの方法を頻用しています。
(参照)「現代アメリカの陰謀論」(最後に本命の911テーマを持ってきて説得力のない批判を加えている本)など

書籍「次の超大国は中国だとロックフェラーが言った」の著者ヴィクター・ソーンは、ならず者たちのこの常套手段を逆用して真実を人々に伝える方法を発明したようです。つまり多くの真実の中に所々明らかな嘘を差し込んだのです。なぜストレートに真実を伝えず、このような複雑な手立てを講じなければならないのか、それは真実を伝えようと考えた者たちがこれまでどんな目に遭ってきたのかを理解する必要があります。弾劾の対象は絶大な権力を握った無法者たちなのです。

ソーンはUFO関連の軍事施設と噂されるエリア51が実は「AI(人工知能)」を研究しているとの話題から筆を起こしています。この事実を隠すためにUFOの噂は煙幕として使われたと彼は書きます。ではこの人工知能の話は本書のどこへ展開するのか―そう、全く展開しないで立ち消えになるのです。代わって、UFOの話はあちこちで展開され続けます。煙幕に使われたと主張された後に、さぞ現実の出来事であるかのように、また自分の体験談として宇宙人話が持ち出されます。

本書は主にロックフェラーについて書かれた多様な書籍の概要紹介本ですから、所々で互いに矛盾した個所があります(例えばケネディ暗殺の首謀者を特定する個所)。しかし、最初に特定の者たちが煙幕としてUFOを使ったと主張した後で、実はその同じ者たちが宇宙人と関係があると主張することは致命的な論理破綻です。文を書く人間であれば、この欠陥を見落とすはずがありません。ソーンは敢えてUFOの話を冒頭に引くことで、読者にウィンクして見せているのです。

そうして本書からUFO・宇宙人話と関連部分(5章全体など)を除いて改めて眺めると、読者はかなり一貫したロックフェラー情報を得ることができるようになっています。残念ながら、私のようにしばらくこのテーマを追いかけた者にとっては初見のセオリーは見出せません。知らなかった傍系情報を散見するくらいが関の山です。しかし、コンパクトに情報が集められたという点では評価できますし、初めてこのテーマに接する方には一読の価値があると思います。

著者の意見については、偏狭な民族主義が時折顔を覗かせますので各自でご判断を。それでもロックフェラーの膝元でこのような書籍が出版されたことをひとまず喜びたいと思います。

次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた〈上〉技術・諜報篇

次の超大国は中国だとロックフェラーが決めた〈下〉謀略・金融篇

現代アメリカの陰謀論―黙示録・秘密結社・ユダヤ人・異星人

getmessage at 13:01|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)
ブログ概要
zero
映画(劇場公開・DVD・ビデオ)、書籍、ニュース、キャンペーンなど、メディアを通して表現されたものからメッセージを抽出し、隠された意味や表現者の意図を探ります。

最新記事集(トップページ)はこちらです
記事一覧(メッセージリスト)はこちらです
最新記事
カテゴリー
ブログ内検索