2007年05月05日
「ダヴィンチコード」のメッセージ2
ヘルマプロディートスの無垢(ハイパー・ルネッサンス)
下向きの三角で象徴される聖杯と、上向きの三角で象徴される聖剣。この二つの三角を合わせた星型(六芒星)が両者の結合を示すとした上で、聖杯はマグダラのマリアを、聖剣はイエス・キリストを暗喩しており最終的に両者の結婚を表すとする「ダヴィンチコード」―いかにも苦しい展開です。下向きの三角が聖杯を意味した前例はなく(作中でも認めている)、聖杯とマグダラのマリアを結びつけたのも最近の一例(「レンヌ・ル・シャトーの謎」)だけです。六芒星はイスラエル王国あるいはそれ以前から存在する図像と考えられており(イスラエルとの関係は近年とも)、これをイエス・キリストの秘密と結びつけたのはかなり強引と言わざるを得ません。
前回の記事で、特定の女系家が時の権力者との婚姻により古代の血統(王権)を現代にまで保持しているとの説を紹介しました。実はダン・ブラウンの主張はキリスト教とは直接関わりを持たないこの説を下敷きにしていると考えた方が無理がありません。下向きの三角は古来「女性」を意味する図像、上向きは「男性」です。両者を合一してできる図像は「聖婚(聖なる婚姻)」を象徴します。キリスト教的な概念を外せば主張は至ってシンプルになります。
(参考)「ダヴィンチコード」のメッセージ1
イシュタル、イナンナ、アシュタロテ、アフロディーテ等々と土地毎に異称で呼ばれる同一神「愛と戦争の女神」「暗黒(叡智)の女神」崇拝がメソポタミアから地中海世界に至る地域に広がっていました。こうした地域では、智慧を保持するのは女性であり、男性はそのような女性との結合により初めて智慧に与れると考えられていました。このような思想が「聖婚」の背景に流れています。
同じ根から、一時的な結合を実現するものとして「神殿娼婦」の伝統も生じました。女性は女神の神殿に出向き、そこで出会った男性に処女を捧げなければなりません。このような奇異な風習が信仰地では継承されていました。マグダラはイエス・キリストの時代まで女神信仰が生き残った地として有名だったようです。マグダラのマリアが初期教会から白眼視されたはそのためだったと思われます(意図的にか偏見の影響かは別にして)。
では、もしマグダラのマリアが実際に女神崇拝者だったならどうなるでしょう。彼女によってイエス・キリストは智慧へのイニシエイトを許され権威を得たこととなり、二人が六芒星で示される「聖婚」を成就したとなって、「ダヴィンチコード」の主張は太い線で塗り直されます。彼らはマグダラのマリアとイエス・キリストとの間に特別な関係がないことを知っています。その上でどうしても両者を結び付けたいようです。
さて、もう少し先へ進みましょう。ギリシャには男性原理を担うヘルメスと女性原理を担うアフロディーテが結ばれて(聖婚)、さらに新しい神を産み出すとの思想がありました。この児童神は二柱の神の名を取って「ヘルマプロディートス」と名付けられました。性的には必然として「両性具有」となります。以前の記事で取り上げた数秘術ではまさに六芒星がこの神の象徴とされています。
<参照>Cケレーニイ・CGユング共著「神話学入門」(前掲)
数秘術(英文) (下方の6の項)
ヘルメスはロバート・グレイヴズが現代の拝金主義の起源と見た神、アフロディーテは彼が理想と仰いだ智慧の神(暗黒の女神イシュタル)です。興味深いことに、グレイヴズの思想内の対立がヘルマプロディートスで見事に止揚されています。現代のマモン(国際金融資本を頂点とする金権社会)勢力の雄ロックフェラー家にはこれ以上望むべくもない好個の婚姻だったに違いありません。
(参考)「暗黒の女神」のメッセージ
ヘルマプロディートスは「無垢」を特徴とします。映画「レディインザウォーター」を観られた方は、管理人クリーブランドが韓国人母の前で子供として振舞ったシーンを覚えておいでかと思います。なぜあのような情景が加えられる必要があったかは、これで説明がつきます。また映画「ヴィレッジ」では、創立者の一人が振り返って「我々は無垢の世界を築いた」と表白します。ガイア理論の命名者ウィリアム・ゴールディングのライフテーマ「無垢の喪失」とも一致します。
ところが、映画「ダヴィンチコード」では主人公ソフィー(姓のヌヴ―と合わせ「新しい知恵」の意)が性の儀式を目撃したエピソードからも分かるように、合一や婚姻そのものが重視されており、どちらかと言うと肉体レベルでの理解が中心です。ヘルマプロディートスの思想のように未来を志向するより、過去(の叡智)に視線が向けられています。どうやら出発点の女神は同じでも、目指す方向は異なる二つの思潮が存在するようです。
中世に至ると、ヘルマプロディートスは錬金術の中で「賢者の石」へと姿を変えます。「対立の統合(接合)」を核とする思想を奉じ、女性原理と男性原理を止揚して新しい価値や社会を生み出そうとするグループ、これが私たちが追跡しているロックフェラー一派であり、シャマランやスピルバーグの作品は彼らの手になるものです。これに対して、対立を意識しながらも古代の女神信仰復活を目指すグループは、フランスからイギリスに活動基盤があるようです。彼らは基本的には協力し合っていますが、互いに牽制し合う関係でもあります。
(参考)映画「コンスタンティン」のメッセージコメント (12,13に当初の仮説)
<参照>マンフリート・ルルカー著「鷲と蛇」
今後場面によっては、二つのグループを区別する必要が出るかもしれません。そこで、前者をタイタングループ、後者をオベロングループと命名しておくことにします(シェイクスピア「夏の夜の夢」から。タイタンはティタニアの語源、伝記作家ロン・チャーナウが付けたロックフェラーの代名詞)。
鷲と蛇―シンボルとしての動物
下向きの三角で象徴される聖杯と、上向きの三角で象徴される聖剣。この二つの三角を合わせた星型(六芒星)が両者の結合を示すとした上で、聖杯はマグダラのマリアを、聖剣はイエス・キリストを暗喩しており最終的に両者の結婚を表すとする「ダヴィンチコード」―いかにも苦しい展開です。下向きの三角が聖杯を意味した前例はなく(作中でも認めている)、聖杯とマグダラのマリアを結びつけたのも最近の一例(「レンヌ・ル・シャトーの謎」)だけです。六芒星はイスラエル王国あるいはそれ以前から存在する図像と考えられており(イスラエルとの関係は近年とも)、これをイエス・キリストの秘密と結びつけたのはかなり強引と言わざるを得ません。
前回の記事で、特定の女系家が時の権力者との婚姻により古代の血統(王権)を現代にまで保持しているとの説を紹介しました。実はダン・ブラウンの主張はキリスト教とは直接関わりを持たないこの説を下敷きにしていると考えた方が無理がありません。下向きの三角は古来「女性」を意味する図像、上向きは「男性」です。両者を合一してできる図像は「聖婚(聖なる婚姻)」を象徴します。キリスト教的な概念を外せば主張は至ってシンプルになります。
(参考)「ダヴィンチコード」のメッセージ1
イシュタル、イナンナ、アシュタロテ、アフロディーテ等々と土地毎に異称で呼ばれる同一神「愛と戦争の女神」「暗黒(叡智)の女神」崇拝がメソポタミアから地中海世界に至る地域に広がっていました。こうした地域では、智慧を保持するのは女性であり、男性はそのような女性との結合により初めて智慧に与れると考えられていました。このような思想が「聖婚」の背景に流れています。
同じ根から、一時的な結合を実現するものとして「神殿娼婦」の伝統も生じました。女性は女神の神殿に出向き、そこで出会った男性に処女を捧げなければなりません。このような奇異な風習が信仰地では継承されていました。マグダラはイエス・キリストの時代まで女神信仰が生き残った地として有名だったようです。マグダラのマリアが初期教会から白眼視されたはそのためだったと思われます(意図的にか偏見の影響かは別にして)。
では、もしマグダラのマリアが実際に女神崇拝者だったならどうなるでしょう。彼女によってイエス・キリストは智慧へのイニシエイトを許され権威を得たこととなり、二人が六芒星で示される「聖婚」を成就したとなって、「ダヴィンチコード」の主張は太い線で塗り直されます。彼らはマグダラのマリアとイエス・キリストとの間に特別な関係がないことを知っています。その上でどうしても両者を結び付けたいようです。
さて、もう少し先へ進みましょう。ギリシャには男性原理を担うヘルメスと女性原理を担うアフロディーテが結ばれて(聖婚)、さらに新しい神を産み出すとの思想がありました。この児童神は二柱の神の名を取って「ヘルマプロディートス」と名付けられました。性的には必然として「両性具有」となります。以前の記事で取り上げた数秘術ではまさに六芒星がこの神の象徴とされています。
<参照>Cケレーニイ・CGユング共著「神話学入門」(前掲)
数秘術(英文) (下方の6の項)
ヘルメスはロバート・グレイヴズが現代の拝金主義の起源と見た神、アフロディーテは彼が理想と仰いだ智慧の神(暗黒の女神イシュタル)です。興味深いことに、グレイヴズの思想内の対立がヘルマプロディートスで見事に止揚されています。現代のマモン(国際金融資本を頂点とする金権社会)勢力の雄ロックフェラー家にはこれ以上望むべくもない好個の婚姻だったに違いありません。
(参考)「暗黒の女神」のメッセージ
ヘルマプロディートスは「無垢」を特徴とします。映画「レディインザウォーター」を観られた方は、管理人クリーブランドが韓国人母の前で子供として振舞ったシーンを覚えておいでかと思います。なぜあのような情景が加えられる必要があったかは、これで説明がつきます。また映画「ヴィレッジ」では、創立者の一人が振り返って「我々は無垢の世界を築いた」と表白します。ガイア理論の命名者ウィリアム・ゴールディングのライフテーマ「無垢の喪失」とも一致します。
ところが、映画「ダヴィンチコード」では主人公ソフィー(姓のヌヴ―と合わせ「新しい知恵」の意)が性の儀式を目撃したエピソードからも分かるように、合一や婚姻そのものが重視されており、どちらかと言うと肉体レベルでの理解が中心です。ヘルマプロディートスの思想のように未来を志向するより、過去(の叡智)に視線が向けられています。どうやら出発点の女神は同じでも、目指す方向は異なる二つの思潮が存在するようです。
中世に至ると、ヘルマプロディートスは錬金術の中で「賢者の石」へと姿を変えます。「対立の統合(接合)」を核とする思想を奉じ、女性原理と男性原理を止揚して新しい価値や社会を生み出そうとするグループ、これが私たちが追跡しているロックフェラー一派であり、シャマランやスピルバーグの作品は彼らの手になるものです。これに対して、対立を意識しながらも古代の女神信仰復活を目指すグループは、フランスからイギリスに活動基盤があるようです。彼らは基本的には協力し合っていますが、互いに牽制し合う関係でもあります。
(参考)映画「コンスタンティン」のメッセージコメント (12,13に当初の仮説)
<参照>マンフリート・ルルカー著「鷲と蛇」
今後場面によっては、二つのグループを区別する必要が出るかもしれません。そこで、前者をタイタングループ、後者をオベロングループと命名しておくことにします(シェイクスピア「夏の夜の夢」から。タイタンはティタニアの語源、伝記作家ロン・チャーナウが付けたロックフェラーの代名詞)。
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この記事へのコメント
1. Posted by サトシ
2007年05月06日 23:07
ハリウッドの中に見隠れする「対立」の正体に迫る見方としてタイタンとオベロンというグループ名で分けるというのはとてもユニークですね。
フィクサー達が意図的に対立を作り、そこから止揚を導き出そうとしてるというのは確かに感じます。
「スパイダーマン3」は「もう一人の敵、それは自分」というコピーですしギリシャの神々やマイノリティを想起させるキャラクター達が抗争を繰広げる「Xメン」シリーズを見ていても感じます。
zeroさんの影響で神話や考古学的世界に少しずつ興味が沸いてきているので「無垢」や「止揚」を象徴する「ヘルマプロディートス」の話は興味深いお話でした。
フィクサー達が意図的に対立を作り、そこから止揚を導き出そうとしてるというのは確かに感じます。
「スパイダーマン3」は「もう一人の敵、それは自分」というコピーですしギリシャの神々やマイノリティを想起させるキャラクター達が抗争を繰広げる「Xメン」シリーズを見ていても感じます。
zeroさんの影響で神話や考古学的世界に少しずつ興味が沸いてきているので「無垢」や「止揚」を象徴する「ヘルマプロディートス」の話は興味深いお話でした。
2. Posted by サトシ
2007年05月06日 23:11
「レッド・ドラゴン」の中でもレクターは犯人の手がかりを示すのに「無垢の兆」という詩を引用しますね。
作品のテーマもヘルマプロディートス的だったと思います。タイタングループに属する作品でしょうか。
ロックフェラーフィルムの符号も6つ揃っています。
「赤い怪物」から連想するのですが、政治的イデオロギーをも暗喩しているように思えました。68年の5月革命のようなものを再びおこしたいフィクサーの思惑が感じられます。(犯人の名前もフランシス)最新作の続編「ハンニバルライジング」のレクターが握る凶器もあからさまなほどですね。
フィリップシーモアホフマンがこの映画で「カポーティ」と同じくジャーナリズム活動に明暮れて事件を追求していった末に、「見る」という罰を受ける男の役を演じているのも奇妙な一致を感じました。
作品のテーマもヘルマプロディートス的だったと思います。タイタングループに属する作品でしょうか。
ロックフェラーフィルムの符号も6つ揃っています。
「赤い怪物」から連想するのですが、政治的イデオロギーをも暗喩しているように思えました。68年の5月革命のようなものを再びおこしたいフィクサーの思惑が感じられます。(犯人の名前もフランシス)最新作の続編「ハンニバルライジング」のレクターが握る凶器もあからさまなほどですね。
フィリップシーモアホフマンがこの映画で「カポーティ」と同じくジャーナリズム活動に明暮れて事件を追求していった末に、「見る」という罰を受ける男の役を演じているのも奇妙な一致を感じました。
3. Posted by zero
2007年05月07日 10:38
サトシさん、こんにちわ。
「羊たちの沈黙」「レッド・ドラゴン」「ハンニバル・ライジング」といったところは私としては大変苦手な分野です。こうした未見の作品にサインを発見していただくととても助かります。
ところで、私からも情報を。サトシさんが注目された「アルジェリア戦争」を元に「宇宙戦争」を解析されているサイトを見つけました。私の解析内容に重なるところもあり、参考になります。
「映画観覚」
http://d.hatena.ne.jp/momochiki/20050713
「羊たちの沈黙」「レッド・ドラゴン」「ハンニバル・ライジング」といったところは私としては大変苦手な分野です。こうした未見の作品にサインを発見していただくととても助かります。
ところで、私からも情報を。サトシさんが注目された「アルジェリア戦争」を元に「宇宙戦争」を解析されているサイトを見つけました。私の解析内容に重なるところもあり、参考になります。
「映画観覚」
http://d.hatena.ne.jp/momochiki/20050713
4. Posted by サトシ
2007年05月07日 15:41
情報ありがとうございます。
とても共感を覚える解析です。
「911からアメリカ発祥の街へ」という旅を描いているというのも面白いですし参考になりました。
「地獄の黙示録」のように結末から発端へ遡って行くという構成も隠されているようですね。
とても共感を覚える解析です。
「911からアメリカ発祥の街へ」という旅を描いているというのも面白いですし参考になりました。
「地獄の黙示録」のように結末から発端へ遡って行くという構成も隠されているようですね。

