2007年04月13日

映画「コンスタンティン」(フランシス・ローレンス監督)のメッセージ

槍と子宮の合一(ハイパー・ルネッサンス)

これまでの記事で、映画「マイノリティリポート」が、ヨハネ黙示録の結末入れ替えをメッセージしていると指摘してきました。先頃、同黙示録の対立軸を逆転させた構図をメッセージしている映画「レディインザウォーター」が見出され、私の解読が出鱈目や単なる思いつきでないことが証明されたところです。こうした記事を読んでくださったサトシさんが、作中そのことを明言している作品があるとの指摘を寄せてくださいました。映画「コンスタンティン」です。
(参考)映画「レディインザウォーター」のメッセージ4
映画「レディインザウォーター」のメッセージ10へのコメント

作品を再見したところ、確かに主人公ジョン・コンスタンティンが、こう解説しています。「地獄には別のヨハネ黙示録があり、(通常とは)異なる視点で(終りのときが)記されている」。ヨハネ黙示録は、イエス・キリスト対「神の敵(人間の誘惑者)である竜(悪魔、サタン、ルシファー)・海の獣・地の獣・淫婦連合勢力」の決定的な戦いを、イエス・キリスト側の視点で描いています。ですから「異なる視点」とは神の敵側の視点であり、結果「悪魔が勝利する」ことを意味します。

この作品には「水」へのこだわり、「全浸礼」など他のロックフェラー作品群との共通点が多く確認できるのですが、この際こうした点は措くことにします。この映画の本質を知るには、真っ直ぐにクライマックスシーンに向かうのが良いでしょう。「プールサイドの儀式」―映画「レディインザウォーター」と重なるこの儀式にメッセージが凝縮されているからです。

彼らにとって特別なその場所で、悪魔の子マモン一派が地獄のヨハネ黙示録に沿って、世界を新しくする(つまり「終りのとき」を迎える)ための儀式を執り行います。ガブリエルという名の執行者は天使と人間の中間存在(女性)。彼女の手にはキリストの身体を貫いたと言われるロンギヌスの槍の剣先が握られており、プールサイドの床にはお腹に悪魔の子を宿したアンジェラ(イザベルの双子の姉)が寝かされています。槍がアンジェラの子宮目がけて振り下ろされよう(帝王切開)とするまさにその瞬間、時は止まります。かくして私たちはこの静止画をじっくりと眺めることができます。

ガブリエルは神の子イエス・キリストの誕生をマリアに告知したと聖書に記述された天使(通常男性)です。その天使を今度は悪魔の子の誕生に立ち会わせるのですから、これだけでも制作者のキリスト教に対する態度は分かります。槍で貫かれようとするアンジェラ(Angela)の半身、イザベルIsabelの名は「バアルの娘」を語義とします(注1)。バアル神(旧約聖書における最大の敵)をイスラエルに持ち込んだ名高い悪女イゼベルJezebel(the daughter of Ethbaal)に由来する名と私は推測しています(Jezebelはイザベルとも発音されます(注2))。そのイザベルが半分天使(angel)にされてマリアの役を担わされます。(イゼベルの名は渦中のヨハネ黙示録にも登場)
<参照>Wikipedia「受胎告知
(注1)Wikitionary「Isabel」 (Isabelの語源"daughter of Baal"の個所)*信じられなければ"Isabel daughter of Baal"でgoogle.com検索を(ショックを受けられた方、ごめんなさい)
(注2)英語版Wikipedia「Jezebel

半田広宣氏のブログが指摘するとおり、ガブリエルが持つ槍は「男性原理」、アンジェラの子宮は「女性原理」を指し示すと見るのが正解でしょう。これを図像に置き換えたのが、作中に示されるマモンの印なるものです。円と十字で構成されたこの図像をよく見ると、十字はこの槍の剣先と釘のようなものと分かります。釘は作品に登場しませんが、恐らくは十字架のイエスを固定した特別な釘を示していると思われます。円は子宮です。この円と十字が重ね合わされていますので、件の図像は「男性原理と女性原理の合一」を示し、静止画は「合一の儀式」を示すことになります。
<参照>Cave Syndrome(半田広宣氏ブログ/ガブリエルについての指摘も)

mammon









(私が描いたイメージ図です)

この概念は既にギリシャ末期のグノーシス思想に軌跡が認められ、中世錬金術の「接合」へと連なります。長く人間を魅了し続けてきた概念です。時代により比重は揺れますが、身体より魂のテーマとして捉えられ、それゆえ特別な儀式が編み出されたりもします。この概念の本質は、「対立物の一致」にあります。従って先の記事で私が強調した「女系社会->男系社会->女系社会の再生」の図式には馴染まないと分かります。この概念を信仰にまで高めた者たちが描くポスト男系社会は両者を止揚した社会となるはずです。
<参照>書籍「神話学入門」(Cケレーニイ・CGユング共著P131)
書籍「暗黒の女神」のメッセージ

この先は今後の記事に委ねることにして、今は映画に戻ります。コンスタンティンが地獄でイザベルのネームバンドを掴むシーンがあります。やはり時間が停止したように見えるこのシーンは、もう一つの絵画となって私たちの記憶に刻まれます。この印象的な絵は私たちにドラクロワの「民衆を率いる"自由"」を想起させます。

constantineliberty







どうやらコンスタンティンは革命家として設定されているようです。この革命家はバアルで象徴される女系社会を復権させ(男系社会が追いやった地獄から救い出し)、男系社会(キリスト教社会)を揺るがします。彼の役割は新しい社会へと世界を導くことです。作品のラストシーン、コンスタンティンは取り戻した槍を本来の持ち主であるバチカンには返さず、天国と地獄の一致を体現する女性の手に預けます(サトシさん指摘)。しかしここに「一旦は」と付け加えておくべきでしょう。彼が阻止したはずの儀式の結実である合一を今度は正義の救世主として彼自身が完成させ社会に招来させるとき、槍は彼の手の中にあるはずです。絵画の女神の左手にしっかりと銃剣が握られたように。

最後に。ご承知のとおり、米国独立100周年に"フランスから贈られた"自由の女神像はドラクロワの絵の女性です。ここからは―サトシさん、出番です。
(参考)メッセージジャーナルから2のコメント
映画「トゥモローワールド」のメッセージ

*ロンギヌスの槍は単なる伝承に過ぎず、キリスト教の本質とは関係がありません。ここに書かれているのは彼らの思想(あるいは物語)についての考察であることにご注意ください。

神話学入門


収録時間:121分
レンタル開始日:2005-09-02

Story
「マトリックス」シリーズのキアヌ・リーブスが主演を務め、最新のVFXを駆使した大ヒットアクション。特殊な能力を使いこの世に蔓延る“異変”を取り払うエクソシスト、ジョン・コンスタンティンの孤独な戦いを描く(詳細こちら

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1. コンスタンティン  [ 1-kakaku.com ]   2007年05月09日 03:10
アメコミ「ヘルブレイザー」を原作に、キアヌ・リーブスが、『マトリックス』に続いて救世主的なヒーローを演じる、ホラーテイストのアクション。この世には、悪魔や天使が宿った人間が生息しており、私立探偵のジョン・コンスタンティンは、彼らを見分けることができる。...

この記事へのコメント

1. Posted by サトシ    2007年04月14日 12:01
今回の解読も本当に驚きました。
まさか、最後に、自由の女神に辿り着くとは・・・
間が空いてしまって申し訳ないです。後にコメントさせて下さい。
2. Posted by zero    2007年04月14日 20:38
いきなりの”振り”に驚かれたかもしれません。ノリがあったことは白状しますが、決して強引に結びつけた訳ではありません。ロックフェラーフィルムにおけるフランスの扱い、その意図についてはまだまだ霧の中ながら、やはり深いところでつながっているとの予感はあります。

どうぞ時間を掛けてサトシさんのお考えを熟成させてください。楽しみにしています。その他、ご感想、ご指摘はお気軽にお寄せください。刺激になり、新たな気づきにもなりますので。他の皆様もぜひ。
3. Posted by サトシ    2007年04月16日 00:55
1.すみません。コメント遅れました。
やはり、うまく考えがまとまりません。(とほほ)
また散漫な長文となってしまいましたが、考えを述べさせて下さい。

やはり、コンスタンティンのラストシーンであるプール際のシーンはダヴィンチ・コードの主張と合致するところがあったようですね。
ダヴィンチ・コードでは、ラストに「聖盃」の在り処をフランスのある場所にあることを示しますが、フィクサー達は、この事実(?)を早く受け入れがたいと考える人達も含めて、広めたいと考えているのでしょうか。
そして、フランスのある勢力はその秘密や考え方を明け渡さぬよう妨害しているように描きたいのでしょうか?フランスが主導してユーロでドルを脅かそうとすることとも関係が?などと、これまでモヤモヤ考えていた所です。見当違いかもしれないですが。
4. Posted by サトシ    2007年04月16日 00:57
2.フランスのユーロ硬貨にも刻まれているフランスを擬人化したイメージ像が「マリアンヌ」というのも気になっていました。「黒い」マリア像などマリア信仰の中心地は南フランスのマグダラにあるそうですね。
マトリックスのメロヴィンジアン(メロヴィング王朝?)はソースに辿り着く為に必要なキーメイカーの代価として(未見ですがトゥモローワールドに登場する貞淑とは程遠い懐妊した女性はキーと言う名なのですね。)オラクルの目を渡せと取引きを持ちかけます。神託を告げるオラクルはガイア信仰的だと思うんですが、それを取上げてしまいたいというように思えたのです。
一方で、メロヴィンジアンの妻、ペルセフォネーはキリストを象徴するネオから唇を奪いますが三位一体を表すトリニティの前でするあのキスシーンはキリストから聖性を奪い、ただの人間の男に堕してしまいかねない、マリア信仰的なものを感じました。
5. Posted by サトシ    2007年04月16日 00:59
3.さて自由の女神。zeroさんはホントに凄いものを見い出しますね。
トゥモローワールドのあの「歌」からも確かにフランスからの皮肉な「贈リ物」自由の女神に対する憎悪を感じます。
コンスタンティンを革命家と設定している。という分析に驚きました。
キリスト教を今の形に定めたコンスタンティヌスを、更に今、別の形に変質させる革命家と設定しているということですね?
調べたんですけど自由の女神は「マリアンヌ」だったんですね。
王政だった頃のフランスの象徴は王家を示すユリの花だったのに対し、共和制に変わってからは「マリアンヌ」になったらしいですが、ユリの花というのは「マリアの純潔」を示すそうですね。
マリアを「純潔の乙女」から「胸をあらわにする女」に変えたというのは何かを暗示しているように思えます。
6. Posted by サトシ    2007年04月16日 01:00
4.自由の女神のモデルが実は「黒人奴隷の女性をモデル」にする予定であったという話なども見つけました。黒いマリア信仰は実はマグダラのマリアや娘のサラが黒人奴隷であったことを示すとする説もあるようなので気になります。
http://plaza.rakuten.co.jp/infinitefaith/033005
自由の女神は当初、フランス人達から奴隷解放を祝うために、贈られるはずだったという話です。北部の奴隷を解放しなかったリンカーンを非難すらしたことなども述べられています。
でも一方で同じ頃フランスはアルジェリアへの侵攻など、様々な植民地政策を行っていますよね。
7. Posted by サトシ    2007年04月16日 01:21
5.一連のハリウッド映画のフランスに対する悪意ある表現の数々は「マリア」の秘密を握るフランスに「皮肉をこめた贈り物や非難はもういい。お前達がとっくに知っているはずの秘密を早く明かしてキリストの呪縛から我々を解放して欲しい」と言いたいのだろうか?と考えたりするんですが・・・
でも、だいたいこの秘密を明渡したり、レジームを変化させるのにフランスがそんなに拒んだり邪魔をしているんだろうかと自分でも何か引っ掛かってます。
無知な僕なりに主観的な考えを述べてしまいました。自信のない論ですし間違いがあれば指摘して下さい。ZEROさんの考えも聞かせて下さい。
8. Posted by サトシ    2007年04月16日 01:26
6.話がコンスタンティンからだいぶそれてしまいました。
あと一つ、あまり関係が無いかもしれないですが、気になってる事を述べさせて下さい。
世界中のフィクサー達が一同に会するビルダーバーグ会議、それに国際投資家会議の今年の開催場所がイスタンブールだそうですね。
バザール(市場)が広がるイスタンブールの街の地下にはまだ二千年前の巨大な地下貯水池があり「地下に沈んだ宮殿」と呼ばれていますが、そこではコンスタンティヌス帝が今も白い大理石とり眠っているのだそうです。何か宗教的な関連はないでしょうか。グレイブスのマモンの話など、いろいろ考えさせられる出来事のように思えます。
映画のコンスタンティン同様、大きな変革に繋がる出来事となりそうな気がするんですがどうでしょうか。
9. Posted by zero    2007年04月16日 08:01
サトシさん、コメントありがとうございます。

ご指摘のとおり、映画「ダヴィンチコード」は今取り組んでいるテーマの重要な作品で、次の記事として準備中です。今はマグダラのマリア黒人説を含む多様な情報の中でもがいているところです(ちなみに「トゥモローワールド」のキーは黒人、「レディインザウォーター」でストーリーを救う石はキー)。

メッセージを発信している人の立場、従って意図(特にフランスに対する)を整理する必要があると思います。ますますフランスが出現して、このテーマの重要性は理解しました。私も何か見えたらコメントさせていただきます。
10. Posted by zero    2007年04月16日 19:58
1.マリア信仰かマグダラのマリア信仰か
マリアだとカトリック
マグダラのマリア信仰はキリスト教の枠内とは言えない
グノーシスはキリスト教より古い
グノーシスと知恵(女神)との関係は? 
暗黒の女神だから黒いのでは?

2.自由の女神とは何者か?
マリア信仰とは思えない(ではマグダラのマリアか?)
(フリージア帽とは?)
下の勢力との関係は?

3.フランスにマグダラのマリア信仰を復活させようとする勢力が?
彼らの側からメッセージを発している作品は?単なる復活プロモーションではなさそう
どこへ向かおうとしているのか?メッセージは?

4.デイヴィッド・ロックフェラーの思惑とは異なるのか?
デイヴィッド側の作品における牽制表現?
何がどう異なるのか?どこまで利益が一致するのか、敵対関係か?
11. Posted by サトシ    2007年04月17日 15:32
キリスト教だけでも様々な宗派があるのに、宗教に関してまともに勉強した事がないので、自分でよく整理もせぬまま不確かな情報に翻弄されてしまったようです。
マリア信仰やマグダラのマリア信仰すら混同してしまいました。すみません。



12. Posted by zero    2007年04月17日 20:06
サトシさん、仮説です。

今後の記事でさらに明らかにされる「対立の一致」を目的に世界改革を推進している勢力は、ヨーロッパ大陸グループと新大陸グループに分かれている。目的は共通だが、目的を遂行する過程においてキリスト教にどう対応するかは異なる。本来はキリスト教も対立の一軸として止揚されるべきであって、駆逐される対象ではない。しかし新大陸グループにはキリスト教勢力が圧倒的に力を行使する現実を前に、まずはキリスト教勢力を排除せざるを得ない事情があった(この方向で理論武装)。

当ブログで取り上げている作品群もキリスト教に対する態度から二つのグループに分けられる。同教への敵愾心をむき出しにしている作品群と、キリスト教を他の宗教と混淆させるためにキリスト教徒から見れば敵対的だが制作サイドはそれほどの意図を持たない作品群である。
13. Posted by zero    2007年04月17日 20:08
(仮説の続き)
前者が新大陸グループの手になり、後者がヨーロッパ大陸グループの手になる。後者は、舞台、原作、スタッフなど必然的にヨーロッパとのつながりが濃い。

新大陸グループ作品群:「ミュンヘン」他のスピルバーグ諸作品、「レディインザウォーター」他のシャマラン2作品、「コンスタンティン」
ヨーロッパ大陸グループ作品群:「ダヴィンチコード」「トゥモローワールド」「Vフォーヴェンデッタ」
所属不明:「マトリックス」

新大陸グループの作品群では、ヨーロッパ大陸グループ、特にその中心と思われるフランスへの警戒感や恐れが表現される。逆にヨーロッパ大陸グループの作品群ではヨーロッパが希望の地として描かれる。「マトリックス」はキリスト教への直接的な敵愾心は確認できない点ではヨーロッパ大陸グループ作品と思われるが、フランスへの警戒感が認められ、どちらとも断定できない。
14. Posted by サトシ    2007年04月18日 06:54
面白い仮説です。
この仮説に照らして映画を見て分類してみたり、別の側面からも検証しつつ、知識を集め、気付いたことがあったらまたコメントしていきたいと思います。

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