2007年03月10日

映画「マトリックス」3部作(ウォシャウスキー兄弟監督・脚本・製作)のメッセージ1

終わりは始まり、闇は光

先の記事に、デイヴィッド・ロックフェラーの構想「管理された多元社会」は自己矛盾を抱えると書きました。多分この矛盾を最も深刻に捉え、解決方法を模索していたのは、彼のブレインたちだったに違いありません。そのブレインが製作したと思われる映画があります。ブッシュ・ジュニアを「駆逐される独裁者」に仕立てた映画「Vフォーヴェンデッタ」の脚本を担当したウォシャウスキー兄弟が監督する「マトリックス」3部作です。考察に取り掛かるべき時が訪れたようです。
(参考)映画「Vフォー・ベンデッタ」のメッセージ
映画「レディインザウォーター」のメッセージ8

マトリックスとは「子宮」のことです(Wikipedia)。この特殊な子宮を定義すればこうなります―「外部に出ようとしない限り生存と安全が保障される閉鎖世界」。この定義の中に、映画「ヴィレッジ」の村も、映画「マトリックス」の社会も含み込まれます(最近の映画「Population436/邦題"呪い村"」のRockwell Falls村も加えて良いでしょう)。本作第一部でスミスがはっきり語ったとおり(「マトリックスとは管理のことだ」)、この閉鎖世界を管理する仕組みがマトリックスです。

マトリックス世界の構造を整理しておきます。この世界は「安定システム」と「変則システム」、そして「ハードウェア(電源部・機械部)」の3層から成ります。前2者はソフトウェアと括ることができ、ソフトウェアとハードウェアを結ぶ空間(ミドルウェア?)も設定されています(第三部でネオがインド系のエグザイルと出会った地下鉄駅)。従いまして括り方によって層の数は変わりますが、マトリックス世界にコンピュータの構造が投影されていることは間違いありません。

「メインフレーム(ときにはソース)」とも呼ばれる「安定システム」は、アーキテクトという名のソフトウェア(人工知能)によって創り出され、管理されています。その意に従いマトリックスの秩序を保つ役割を与えられているのが、スミスを始めとするエージェントたち(下位プログラム)です。

これに直観プログラム「オラクル」が創始した「変則システム」が対置されます。過去の実験において、「安定システム」は完全を目指した結果、マトリックスを崩壊させてしまいます。そこで人間の心理を探る研究から、敢えて安定を崩す要素を導入することになったと作品は解説します。両システムは衝突しつつ、より上位の安定を目指します。ここからアーキテクトはマトリックスの父、オラクルは母と表現されてもいます。マトリックスはヴィレッジとは異なり動的な(ダイナミック)システムのようです。

変則システムから生じたものがモーフィアスなどの反乱勢力ザイオンであり、作品の主人公ネオです。彼らはオラクルと協力してマトリックス内の不安定要素を刺激し、凝集させます。マトリックスで暮らす人々も反乱勢力も全員が二つのシステム下に置かれています。作品は各部に設定されたキーフレーズに基づき、観客にマトリックスの全体構造を徐々に理解させつつ終極・結論へと導きます。

第一部「マトリックス」は、主に安定システムと変則システムの末端に照明が当てられ、ザイオンもアーキテクトも姿を隠したままです。キーフレーズはネオの言葉「真実とは何か」。マトリックスは現実か否か、ネオが発した疑問に対しモーフィアスは「真実は我々が囚われていること」と返します。現実の虚構、真実への脱出、ネオに関する預言の真偽が柱となって物語が進展します。しかし、作品は真実を手放しで称揚するのでなく、逆にその価値を相対化します。オラクルは平然と嘘を付き、ネオが目覚めた世界が本当に真実の世界かどうかも怪しくなります。

<参照>Metaphilia (マトリックスを考察する上でとても参考になります。反乱勢力は必ずしもキリスト教を体現せず、多元的・多義的であるとも指摘されています。ネオのキーフレーズもモーフィアスの答えも聖書から引用されていますが、余り深入りすべきではないと感じさせます)

第二部「マトリックス・リローデッド」のキーフレーズは、モーフィアスの言葉「この世には変わるものと変わらないものがある」。「変わるもの」=変則システムと「変わらないもの」=安定システムの関係が明らかとなり、マトリックス管理システムが変動要素さえも管理していたことが明かされます。すべては変動要素を一気に壊滅させるためにアーキテクトが仕掛けた罠でした。一方で、エージェントだったスミスが暴走を始め、最大の変動要素となります。スミスもネオもプログラムレベルを超えた存在となり、マトリックスの構造基盤を舞台とする第三部へと引き継がれます。

これと並行して第二部では、「変わるもの」=ソフトウェアたちが執着する「目的・存在理由」と、「変わらないもの」=ネオとトリニティの「愛」が対置され、両者間の戦いが交差します。ネオは最後に愛を選び取り、真実に続いて目的・存在理由をも相対化します。人間モーフィアスがプログラムたちと同様に目的・存在理由に執着するのは皮肉です。彼がエンディングでネオが救世主でないと聞かされ愕然とするシーンが第二部の到達点を象徴します。

第三部「マトリックス・レボリューションズ」のキーフレーズはオラクルの言葉「始まりがあるものには終わりがある」。マトリックス世界を超え人間もソフトウェアも破壊しようとするスミスは「終わり」を体現し、同じくマトリックス世界を超えすべてを再創造しようとするネオは「始まり」を体現します。そして、ラストでスミスが「罠だった」と気づいたように、この経緯すべてを画策したのはオラクルであり、彼女は構想どおりマトリックスを新しいステージに押し上げることに成功します。マトリックス・レボリューションの主はオラクルでした。

終わり・破壊・闇、始まり・創造・光。両者を併せ持つマトリックスの最深部(真のソース)。作品は、闇を破る光が世界を覆う日の出のスペクタクルで幕が閉じられます。あれは本当に光であり、始まりだったのでしょうか?そもそも革命で成就したものは一体何だったのでしょうか?これらの疑問を読み解く鍵は、自由の根源「選択」にあります。次回の考察に続きます。

マトリックス 特別版

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1. マトリックス リローデッド  [ 1-kakaku.com ]   2007年04月25日 14:25
前作から4年ぶりとなるこの続編では、マトリックス(仮想世界)を創造した人工知能のマシン軍団が、人類の最後の砦である都市・ザイオンを発見し、攻撃を開始する。人類の救世主と目されたネオも、自らのパワーに気づいて精神的に成長。マトリックスの刺客との対決はもち...

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