2007年02月24日

映画「レディインザウォーター」のメッセージ7

全のコスモと多のポリス

映画「レディインザウォーター」の最初の記事で「物語は人々に方向と秩序を与える」と書きました。そしてガイア女神に宗旨替えしたデイヴィッド・ロックフェラーが世界を経営する装置として「物語」を重視しているとも書きました。その物語は既に私たちに与えられています。先刻お気づきでしょう―ガイア理論です。
(参考)「レディ・インザウォーター」のメッセージ集

ガイア理論は1969年にネーミングされた当初から宗教的装いを帯びていました。科学界はまず、地球環境を一個の人格のようなものとして取り扱う姿勢に反発し、理論の中身そのものを冷静に評価することはありませんでした。しかし一般の人々は、宗教的ニュアンスに抵抗がなかったばかりか、まさにその点に魅力を感じたのです。

1975年頃にマスコミで紹介されて以降、ガイア理論は時代の寵児となります。当時のマイノリティ革命の渦から出現したヒッピーやネイチャー愛好家の感覚に適い、科学理論というよりブームとなって社会を席巻したことはご存じのとおりです。この状況を秋元勇巳氏は「ガイアを女神に祭り上げようとする大衆の好意的誤解」と的確に解説しています。
<参照>ジェームズ・ラブロック著「ガイアの復讐」秋元勇巳巻頭解説

秋元氏が「(ラブロックは)『ガイアは検証可能な科学的理論を内包する最初の宗教となり得る』と直感(した)」と書いたとおり、ガイア理論は、本質的に科学と宗教の混合物でした。民族と結びつく宗教を世界から駆逐したかったロックフェラーにとっては、好個の思想だったのです。民衆には民族の毒を取り除いた似非宗教を与え、自身は真正のガイア宗教を奉じる―この形こそが彼の狙いであり、民衆は期待通りに反応してくれたのでした。

実は、ラブロックの理論そのもの(1960年代に構築)は、生物が受動的に環境に適応するとした従来の進化論を修正し、「生物は能動的に環境を改変する」とした点に核心があります。ここにロックフェラーは、神を待ち続けることをやめ、自力で生存環境を改変する自己の行動を正当化する一種の科学的根拠を見出したのではないでしょうか。ラブロックとロックフェラーの最初の接点はそこにあったろうと思われます。
(スピルバーグ監督作品「マイノリティリポート」では、「生物は生き残るためなら何だってする。運命を変えることも、人を傷つけることも」と明瞭にメッセージされます)

後には自身、宗教的側面を積極的に評価するようになるラブロックも、「蠅の王」のウィリアム・ゴールディングから名称に「ガイア」を冠するようアドバイスされるまで、人格的地球環境への意識は希薄だったと想像されます。むしろ、ロックフェラーが理論の中に先の宗教面や、民衆に民族国家からの離脱を促す世界市民(コスモポリタン)意識発芽の触媒を見出し、これを強化すべく働き掛けたと考えるのが妥当ではないでしょうか。(ゴールディングとロックフェラー家との関わりは要調査)

さて、まだ続きがあります。ロックフェラーが世界に与えた物語はガイア理論だけではありませんでした。私たちに伝えられるガイア女神は、ガイア理論が指し示した大地の化身という性格とは別に、多様な子孫を生みだす神々の始祖という性格を併せ持っています。つまりホリスティック(全体論的)な構造の中に多様性を内包するのです。ここが一神教のキリスト教やユダヤ教とは決定的に異なる点です。

「全」についての物語が「ガイア理論」だとすれば、「多」についての物語は1968年の「マイノリティ革命」と考えられます。それまで抑圧されていた黒人、エスニック、平和主義者、少数意見保持者、都市アウトサイダー、女性、学生が一気にマジョリティに対して抗議の声を上げたのです。それはガイアからありとあらゆる神々が産み出された状況さながらでした。
(参考)「1968年のメッセージ1」

ロックフェラーはガイアの思想を世界に広め、世界の構造そのものをガイアの思想に合致させたかったようです。この二つのムーブメントが紡ぎ出す社会は、多様性に満ちた社会(脱民族国家)と緩やかな包括権力(ビッグマダム)に特徴付けられた社会です。その「新しいコスモポリス」において、ユダヤ人はついに安全を手に入れることができるはずです。史上例のない巨大財団運営を通して世界に影響を及ぼすノウハウはJDロックフェラーの時代から十二分に蓄積してきました。継承者デイヴィッド・ロックフェラーにとっては実現可能な、そして資産やエネルギーを投下する真に価値のあるビッグ・プロジェクトだったに違いありません。
(参考)「HGウェルズのメッセージ」

二つの物語は40年後の現代とシンクロします。ガイア理論は切迫度を増して「地球温暖化問題」へと姿を変えました。ラブロックも「ゴドー(神)を待つゆとりはない」と私たちを煽り(上掲書)ます。かつてHGウェルズが核の管理を世界政府の主任務と位置付けたように、今や二酸化炭素排出管理が新たな世界的使命に格上げされそうです。アメリカでマイノリティ大統領が多元主義社会の旗を掲げ(コメント1参照)、国際社会ではアル・ゴアが地球環境問題の旗を掲げて行進する様を私たちは近々、目撃させられることになるのでしょうか。
<参照>田中宇の国際ニュース解説「地球温暖化のエセ科学」

1968年から40年後の今日、ツイン・プロジェクトの完成が近付いています。マダム・ナーフ帰還の準備が整ったようです。

*前回予告の記事順を変更させていただきました

ガイアの復讐

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この記事へのコメント

1. Posted by zero    2007年02月24日 14:06
私はこのまま平常どおりに来年、大統領選が行われるだろうとは予想していません。混乱の中で、ブッシュ・ジュニアに(政治的に)とどめを刺した者がリーダーになるでしょう。現時点で上がっている候補の中の誰かかもしれませんし、全く意外な人物かもしれません。
2. Posted by zero    2007年02月24日 14:23
地球温暖化問題への対応については、ブッシュ・ジュニアが強硬に反対してきました。それは背後の勢力が脱石油の流れを断固阻止するというより、エネルギー転換の判断は手元に留保するということではなかったかと思います。ロックフェラー帝国は、今や石油帝国ではなく、原子力やエタノールを含むエネルギー帝国(もっと正確には金融帝国ですが)です。代替エネルギーへの対応は元々考えており、タイミングとランディングさえ誤らなければ深刻な打撃を蒙ることはないはずです。(なお、ロックフェラー家はJDの時代から市場変化には柔軟でした。またラブロックは一貫して原子力を推奨しています)

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