2007年01月31日

ロックフェラーのメッセージ3

不安の効用

以前の記事に「JDロックフェラーは”談合”を目指し、結果的に”独占”を得た」と書きました。この談合と独占は、同じ「指揮の一元化」を目的とした形態の異なる手法ですが、ロックフェラーの伝記を読むと、両者はもっと緊密に結びついていたことが分かります。
<以下参照>ロン・チャーナウ著「タイタン」
(参考)ロックフェラーのメッセージ2

初めJDロックフェラーが試みたのはクリーブランドの製油業界に談合体制を敷くことでした。業者を束ねることで鉄道会社から有利な価格を引き出そうと目論んだのです。この誘いはロックフェラーの支配に服することを意味しましたので、当然のごとく反発を招き、計画の遂行を妨げました。しかし、このとき業者間に広まった噂が、もっと極端な対応、会社の売却を多くの経営者に選択させます。

その噂は「鉄道を牛耳っているロックフェラーの呼びかけに応じないでいれば、いずれ会社はつぶされる」というものでした。当時のロックフェラーはむしろ後退の瀬戸際にあったにも拘わらず、噂に煽られた精油業者たちは、不安の中で現実を見誤り、すっかり戦意喪失してしまったのです。結果、買収工作は一気に進み、ロックフェラーは思いがけずも早々に市場を直接支配することとなります。「人々を不安に陥れる噂を広めることで自社に有利な状況を作り出す」―ロックフェラーがビジネスの秘策に開眼した瞬間でした。

以来、この戦術は彼のお気に入りとなります。川下である販売業界を独占する際には「独立事業者は今後は製品を扱えなくなりそうだ」との噂を広め(前掲書上巻P454)、ヨーロッパの業者との戦いではロシア製灯油の安全性を疑問視させるような陰湿な噂を流しています(上巻P436)。クリーブランドの精油業界支配から始まり、全米へ、さらに販売業界と生産業界を手中に収め、天然ガスその他の原料業界へ触手を伸ばし、世界へと勇躍するその途次の要所で、ロックフェラーは伝家の宝刀を抜きました。

やがてロックフェラー家の第三世代が宝刀を受け継ぎます。1992年に開催されたビルダーバーグ会議でロックフェラー家の番頭キッシンジャーが「事実であれ噂であれ、生存を脅かすものがやってくると言われて不安に駆られた人々は、自分たちを救い出してくれる者に進んで自由を差し出す」(趣旨)と発言したのは、決して彼個人の思い付きではなく、100年以上に及ぶロックフェラー家の伝統に支えられてのものでした。
(参考)フィクサーと新世界構想2

その方針が21世紀に入った途端に正体の分からない外部の敵「アルカイダ」を生み出し(もちろん準備はその10年前から)、米国民を不安の渦中に投げ込みます。市中には噂が飛び交い、市民がイスラム系市民を攻撃する事態となります。ブッシュ政権はそうした状況を悪用し、テロ警戒度を上げ下げしながら、国をアフガニスタン、イラクとの戦争に導きました。「予防戦争」なる概念で攻撃の敷居を低くした彼らは不安の本性を知っていたのです。
(参考)映画「クラッシュ」のメッセージ
getmessage at 21:13 │Comments(0)TrackBack(0)

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