2006年04月01日

グランドゼロのメッセージ6

ロックフェラーのもう一つの動機

私は今回の一連の記事で、アメリカ改革を主導するロックフェラー、特にデイヴィッド・ロックフェラーの実利的動機について考察しました。しかし私たちは、インサイダー・スピルバーグから、これとは異なる動機、ある意味で決定的な動機を告げられています。ユダヤ民族の安全保障体制を確立することです。

ロックフェラーはユダヤ人なのか――もしこの問いに対する答えが是なら、スピルバーグのメッセージとロックフェラーの状況証拠とが結び付き、私の見方が俄然勢いを増します。ロックフェラー一族がユダヤ人である、隠れユダヤ教徒であると主張する少数の人々の根拠は、ユダヤ人を想起させる名前、キッシンジャーに代表されるユダヤ人の重用、ヨーロッパ大陸のユダヤ財閥ロスチャイルド家との深い関係といったところでしょう。片や反論者の根拠は、JDRの時代から彼らの宗教が"バプテスト"であり、シカゴ大学の創設などその信仰を行動に反映させているように見えること、第二次世界大戦時にユダヤ人を迫害するヒトラーを他の財閥と共に支持したことでしょう。

私はロックフェラー家の信仰が"バプテスト"であることに着目します。バプテストとは、ユダヤ教徒バプテスマのヨハネが実践した全身を水に浸す洗礼(全浸礼)にこだわることで知られる宗派です。この全浸礼で思い起こされるのが、映画「AI」以降のスピルバーグの諸作品です。映画「AI」の主人公デイヴィッドはニューヨークの海に自ら身を沈めました。映画「マイノリティリポート」の主人公ジョンはプールに、次いで浴槽に全身を沈めました。スピルバーグは、決まって全浸礼に状況を一変させる力を担わせます。
(参考)映画「AI」(スピルバーグ)のメッセージ2

2001年の作品から突如としてスピルバーグが強い執着を見せた"洗礼へのこだわり"は一体どこから現われたのでしょうか?私は彼がユダヤ安全保障構想を知ったのと同じ時期に、デイヴィッドの心情にも触れたのだろうと推測しています。洗礼にこだわりを持っていたのはデイヴィッドではなかったかと思うのです。ユダヤ教との接点である全浸礼を重んじる宗派を選択することで、プロテスタントを装う心理的葛藤は余り感じずに済んだのではないかとも想像します。
(もちろんロックフェラー家が本当にキリスト教に改宗した可能性もあります。しかし私は当コラムで911事件等の動機を非キリスト教的な宗教信念にあるとの説を展開しています)

ロックフェラー家は、米国プロテスタントの多数派であるこの派への信仰を公言し、様々な支援の手を差し伸べます。それでもWASPは、ここまで周囲に同化しようとする彼らを尚も排斥します。それは資産の過度な集中を押し留めようとする単純な反作用だったかもしれません。あるいは彼らの強引さへの反発だったかもしれません。しかし当のロックフェラー家の人々は、自分たちが外様、ユダヤ人だからこその迫害と受取り、体制派であるWASP(プロテスタントのアングロサクソン系白人)を激しく憎みます。

その心情を描いたのが映画「AI」です。キリスト教徒にどこまでも同化しようとするAIのデイヴィッド、どうしても受け入れてくれない米国社会――映画はデイヴィッド・ロックフェラーの現実を忠実に切り取りました。二人のデイヴィッドの夢は、この頑なな社会が滅び、全く別の社会が到来することで初めて叶えられます。その転換点に意味深く全浸礼が置かれます。映画「AI」はデイヴィッド・ロックフェラーに捧げられた苦悩と希望の物語です。
(この映画がキューブリックとの合作であることは知っています。彼が遺した脚本を元にしても上記のメッセージを仕込むことは可能だったと考えます)

ロックフェラー家の構想は、資産の増大のための策略であるばかりでなく、ユダヤ民族の安全保障戦略でもあります。第二次世界大戦でモルガンが主導した戦略(ナチスとの融和)を一刻も早く崩したかったのは、実はクリスチャンを装っていたユダヤ人ロックフェラーではなかったかと私は考えています。

今後の基調記事集「グランドゼロのメッセージ

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