2006年03月27日

グランドゼロのメッセージ4

ロックフェラーの米国支配と石油

先頃封切られた映画「シリアナ」(スティーブン・ギャガン監督)は、石油メジャーがいかにCIAを始めとする米国連邦政府機関を牛耳っているかを描いています。米国企業である石油メジャーの利益は、国益でもあるとの論理の下、石油メジャーの意のままに、政府機関が中東の政治に干渉し、要人暗殺をさえ遂行します。

映画には、シカゴ大学を創設したジョン・D・ロックフェラーが関係者と懇談している様子を収めた古い記録映像がストーリーを壊すことも厭わず挿入されています。ギャガンが米政治を歪めた元凶として告発したのは、一時全米の石油の95%を独占し、米国石油メジャーの礎を築いた初代ロックフェラーと、今も石油業界に君臨する直系の継承者たちです。

JDRの孫に当たるネルソン・ロックフェラーの意を呈して70年代の世界情勢を操作したキッシンジャーは、現代にまで大きな影響を及ぼしている石油ショックの仕掛け人です。桜井春彦氏は、イギリスの日刊紙「オブザーバー」に掲載されたサウジアラビアの元石油鉱物資源大臣ヤマニのインタビュー記事を紹介し、OAPECによる石油値上げを望んでいたのがキッシンジャーだったこと、当時の米国石油メジャーが値上げにより窮状を救われたことを明らかにしています。
<参照>桜井春彦著「テロ帝国アメリカは21世紀に耐えられない」

さらにキッシンジャーは、第4次中東戦争とこの値上げを理由とした中東侵攻計画まで立案していたようです(自らの工作によって生じた事態を理由としてさらに攻めかかるのは彼らの常套手段です)。十分な大義名分が得られなかったのか、ソヴィエトの脅威が大き過ぎたのか、幸いこの時は計画が実行に移されることはありませんでした。しかし、その後の湾岸戦争、現在のイラク戦争へと彼の意思は確実に引き継がれています。主役はネオコンに変わっても、遂行されているのはキッシンジャーの石油戦略なのです。
<参照>FreeMLメッセージ新国際連合(英公文書情報)

現代の米国政治問題の中心が石油であることはまず間違いないでしょう。ブッシュ大統領は石油ビジネスで基盤を築き、石油業界の利益を体現する政治家です。石油産油国との密接な関係も広く知られています。副大統領ディック・チェイニーはエネルギー利権会社ハリバートンのCEO、ドナルド・エヴァンズ前商務長官は石油会社トム・ブラウン社のCEO、首席補佐官(その後国務長官)コンドリーザ・ライスは石油大手シェブロンの役員でした。石油業界にとってはこれ以上願うべくもない強力布陣の政権です。

しかし、ロックフェラー家の思惑を石油支配だけに限定して眺めることはできません。彼らのビジネス領域は石油を基盤にしながらも、大きくこれを越えています。映画「シリアナ」で触れられたロックフェラー創設のシカゴ大学は原子爆弾開発に当たり重要な役割を果たしました。マンハッタン計画に協力したのも多くがロックフェラーとモルガン傘下の企業群です(当時は両雄が並び立っていました)。今やロックフェラーが統括する観の強い軍産複合体の米政界への影響力もまた軽視できません。
<参照>広瀬隆著「億万長者はハリウッドを殺す」

ロックフェラー・コングロマリットが米国企業の枠に留まる限りは、その利益を国益と同一視する見方も誤りとは言えません。しかしビジネスドメインと共に、ビジネスエリアをも世界に拡大し、多国籍企業となった同コングロマリットの利益は、アメリカの国益ともはや決して一致しません。ユニラテラリズム(一国覇権主義)を主張するネオコンは、米国の国益を追求していると見せかけながら、実は米国が自滅するよう仕向けている、国際協調派と協力して世界を多極化の道に突き進ませていると田中宇氏は分析します。21世紀のアメリカを動かしているのは、多極化を収益上有利と判断する国際資本の論理に他ならないと氏は結論しています。
<参照>田中宇の国際ニュース解説「欧米中心の世界は終わる?」

今後の基調記事集「グランドゼロのメッセージ

シリアナ
億万長者はハリウッドを殺す〈上〉
億万長者はハリウッドを殺す〈下〉

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映画(劇場公開・DVD・ビデオ)、書籍、ニュース、キャンペーンなど、メディアを通して表現されたものからメッセージを抽出し、隠された意味や表現者の意図を探ります。

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