2006年03月19日

グランドゼロのメッセージ2

世界貿易センタービル(WTC)とロックフェラー

911テロ事件の標的となった世界貿易センタービル(WTC)のツインタワーは、建設当時"ネルソン"と"デイヴィッド"とも呼ばれたそうです。建設推進のキーパースンがこの二人だったからです。チェースマンハッタン銀行の副頭取(当時)だったデイヴィッド・ロックフェラーは、1960年前後から未開発だったローワーマンハッタン地区の可能性に着目し、この地区の起爆剤としてWTCの建設を構想しました。その構想を実現すべくニューヨーク・ニュージャージー両州を動かし、現在も所有者である港湾公社を設立させたのが、当時ニューヨーク州知事だったネルソン・ロックフェラーです。

彼らはかなり強引にプロジェクトを推進したようです。そのことは建築基準法の改正に端的に現われています。1938年に施行された旧基準法では、あのような高層ビルを建築するには莫大な経費が掛かったはずでした。彼らはまず初めに安全性を軽視した違法な基準で建設を開始し、その後で規制緩和が盛り込まれた新法を成立させることでこの関門を突破しました。政治力を頼みとして見切り発車をしたのです。(また元々テナント需要が期待できなかったという意味でもそうでした。1990年代に入るまでテナントのほとんどは両州政府の関連機関ばかりだったようです)
(参考)書籍「9.11生死を分けた102分」のメッセージ1

違法な建築と事後工作、そればかりか911事件で露呈した両タワーの安全性の軽視は呆れるばかりです。先の記事で紹介した書籍「911生死を分けた102分」に詳しいのでここは省きますが、その後連邦政府もこの建物が新しい基準法にさえ違反していたことを認めています(避難階段の数・位置が不適切、避難階段の壁が脆弱)。ロックフェラー兄弟はテロでないにしてもいつか大惨事が起きるかもしれないとの認識を抱いていたはずです。建設当時、航空機の衝突が現実の脅威として心配されていたことも先の記事で取り上げました。
<参照>The New York Times和訳記事(CLAIR New York)
(参考)書籍「9.11生死を分けた102分」のメッセージ3

以上の安全上の問題に加え、最近はアスベスト問題も浮上し、WTCは危機的状況にありました。建替えとなると、まず建物の解体で莫大な費用が掛かり、次に新しい建物を建設するコストが上積みされます。それも大問題ですが、仮にそうした資金が集まったとしても、アスベスト問題は解体を事実上困難にしてしまいました。そして決定的なことに、公社には建替えの法的権限自体がなかったようなのです。
<参照>What really happened

911テロは、この解決不能の難題を一気に解決しました。港湾公社に替わって直前にリース契約を結んだシルバースタイン社が、その契約履行故に再建の権利を認められるという奇跡の法解釈が飛び出します。一群のビルは完全に解体され、アスベストはニューヨーク中に飛び散りました。シルバースタイン社は更地に保険金で新たなビル群を建設できる幸運に恵まれました。関係者は実に運が良かったようです。その原因を作った二人の人物も少なくとも影では胸を撫で下ろしたに違いありません(ネルソンは79年に死去)。表のニュースではシルバースタインの怪しさばかりが目立ちますが、その裏でテロにより不利益を免れた二人の人物の存在を忘れることはできません。

今も存命のデヴィッドは、事件半年後のメモリアルイベントの主要なスポンサーとなり、2004年12月にはWTC Memorial Foundationのボードメンバーに指名されています。911テロ事件後も、彼はWTC、グランドゼロへの影響力を発揮し続けているのです。半年後、1年後のイベントの実施内容決定過程を具に調査できる方は、是非とも試みられることをお勧めします。そこにデイヴィッド・ロックフェラーか、その関係者の関与の痕跡が必ず浮かび上がるはずです。
<参照>LowerManhattan.info
<参照>Freezerbox Magazine

今後の基調記事集「グランドゼロのメッセージ

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