2005年08月06日

映画「宇宙戦争」のメッセージ3

映画「アイランド」の内戦宣言をアシスト

映画「宇宙戦争」にはとても不思議なシーンがあります。地下室の住人との確執です。主人公レイは、復讐に逸(はや)るこの住人を味方でありながら殺してしまうのです。幾ら危険を招き寄せていたとは言え、余りにも唐突な決断であり、共感しにくい行動でした。追い討ちを掛けるように、その狂気の行動を娘レイチェルは優しく受け止めます。違和感が私の中でじわじわと広がりました。恐らく多くの観客が同様に感じたのではないでしょうか?

なぜスピルバーグはこのようなエピソードを作中に挿し込んだのでしょうか?私は以前のコラムで、ここにはストーリーを壊してまでも伝えたかったメッセージがあったと指摘し、それは「映画人としての精一杯の反戦メッセージ」だろうと続けました。
映画「宇宙戦争」(スピルバーグ)のメッセージ2

しかし、そのシーンは余りにも暴力的だったために、「反戦メッセージ」という穏健な表現が私の中で未消化なまま残っていました。主人公レイは、自衛のために携行した銃によって死者が出たとき、深く傷つきました。好戦的な人間ではないとの描かれ方です。その彼が、こともあろうに味方の人間を殺害してしまう。だとすれば、その行為には止むに止まれぬ理由があったはず。娘のレイチェルと共に彼を思い入れたっぷりにかばう監督のそんなつぶやきが聞こえます。スピルバーグはここで一体何を言い訳しているのでしょう?

以前のコラムで指摘したとおり、彼が敵として規定したのは「復讐のために外敵に向かおうとする内部の者」です。これを私は「911テロの復讐に逸り、かえって国民の安全を阻害している現政権」と理解しました。どうやら、スピルバーグが伝えているのは、現政権に向けての反戦メッセージではなく、そんな現政権打倒の呼び掛けのようです。そしてその過程で生じるであろう悲劇に対して、予め言い訳(正当化)をしているのです。
(ただし現政権は決して復讐に逸ってはいないし、フィクサーの敵でもありません。ステロタイプ的に描かれているに過ぎません)

私は、前作「パールハーバー」において特定政策グループに協力したマイケル・ベイが、新作「アイランド」でも同じ過ちを犯したとの疑いを持っています。彼は作中、自由主義者による内戦蜂起を示唆しています。この信じがたい事実を胸に、改めてスピルバーグの最新作「宇宙戦争」を振り返りますと、この作品でも同様に内戦が示唆されていることに驚かされます。

小天体衝突予算獲得キャンペーンにおいては、「アルマゲドン」と「ディープインパクト」が対となりました。同様に今回は「アイランド」と「宇宙戦争」が協力して任に当たっているようです。マイケル・ベイは「アイランド」の脚本を持ち込んだのがスピルバーグだったとインタビューで明かしていますから、これも当然の話かもしれません。
米宇宙軍強化キャンペーンのメッセージ
<参考サイト>シネスマート単独インタビュー

でも、なぜスピルバーグが?しかもいきなり?実はこれもコラムに書いたことですが、映画「AI」においてスピルバーグはキリスト教と向き合っています。「アイランド」と重ね合わせてみれば、以前のコラムの疑問が解消されそうです。彼はキリスト教を憎んでいたのですね。地下室の住人が思わせぶりにつぶやく「死んでも生きる」(ヨハネ福音書11-25)という言葉も、それで住人がキリスト教徒であることを示したかったのかもしれません(コラムを書いたときには全体のメッセージと結び付けてしまいました)。そう言えば、「宇宙戦争」で火星人が最初に破壊したのも教会だったようです。
映画「AI」(スピルバーグ)のメッセージ

不思議な符合ですが、あの2001年にもマイケル・ベイとスピルバーグの作品が夏前に揃って公開されています。「パールハーバー」と「AI」です。このときは、「AI」は「パールハーバー」をアシストしていません。しかし、こうして考察を重ねてみれば、映画「AI」は2005年の内戦を睨(にら)み、キリスト教をまずは揶揄(やゆ)しておく、大衆に反キリスト教社会のメッセージ(「お前たちは御伽噺を信じている」)を投げ掛けておく必要があったのかもしれません。つまり大きな視野で捉えれば、あのときから両者は密接に連携していたとも考えられるのです。

*さらに、件のディープインパクトにもスピルバーグはエグゼクティブプロデューサーとして関わっています。

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